切断型と潜在型のアンチトロンビン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/07 07:49 UTC 版)
「アンチトロンビン」の記事における「切断型と潜在型のアンチトロンビン」の解説
反応部位の切断はトロンビンをトラップさせるが、切断された反応部位ループは結合したプロテアーゼとともに移動し、ループはβシートAの中央部に新たに6つ目のストランドを形成する。この反応部位ループの動きは切断がなくとも誘導されることがあり、その結果構造はPAI-1(英語版)の生理的な潜在型(latent)コンフォメーションと同一となる。そのため、アンチトロンビンの反応部位ループが切断されていない状態でタンパク質の本体に取り込まれたコンフォメーションは、潜在型アンチトロンビン(latent antithrombin、L-antithrombin)と呼ばれる。PAI-1とは対照的に、アンチトロンビンのネイティブコンフォメーションから潜在型コンフォメーションへの変換は不可逆的である。 ネイティブ型のアンチトロンビンは加熱のみ、またはクエン酸存在下での加熱によって潜在型アンチトロンビンへと変換される。しかし極度の加熱がなくとも、37°C(体温)で血中を循環するアンチトロンビンは24時間で10%が潜在型アンチトロンビンへと変換される。 ネイティブ型のアンチトロンビンの立体構造は1994年に決定された。予想外なことに、ヘテロ二量体として結晶化したタンパク質の一方の分子はネイティブ型、もう一方の分子は潜在型の構造であった。形成された潜在型アンチトロンビンは直ちにネイティブ型アンチトロンビン分子と結合してヘテロ二量体を形成し、潜在型アンチトロンビンが分析的に検出可能となるのは潜在型アンチトロンビンの濃度が全アンチトロンビンの50%を超えてからである。潜在型アンチトロンビンは標的の血液凝固プロテアーゼに対して不活性であるだけでなく、活性のあるネイティブ型アンチトロンビンとの二量体化もネイティブ型分子の不活性化につながる。α-アンチトロンビンとは対照的に、ヘパリン活性化β-アンチトロンビンと潜在型アンチトロンビンとの二量体化は安定なため、潜在型アンチトロンビンの形成またはその後の二量体形成によるアンチトロンビン活性の喪失の生理的影響は大きなものとなる。 ネイティブ型から潜在型への変換の中間体となる形態のアンチトロンビンも単離されており、プレ潜在型アンチトロンビン(prelatent antithrombin)と呼ばれている。
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