出願経過の参酌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/29 13:53 UTC 版)
出願された特許が、特許となる要件を満たしていないとみなされた場合、審査官より拒絶理由通知が出される。この拒絶理由通知に対し、出願人は特許請求の範囲を補正する手続補正書や、審査官に対し意見を述べる意見書を提出することで、特許の権利化を目指すことができる。しかし、特許が登録された場合、この意見書で述べられた内容により、特許の権利範囲が制限されることがある(禁反言の法理)。 本特許の審査経過においても、2005年5月27日に特許庁より出された拒絶理由通知に対して、出願人(越後製菓)は2005年8月1日に手続補正書と意見書を出している。そして、手続補正書では、請求項1の要件Bの問題箇所を「載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の側周表面のみに」と補正している。また、意見書では、「そこで、本発明は、切り込みを天火が直に当たりずらい側周表面のみに設け、しかも切り込みを水平方向に切り入れ、さらに周辺縁あるいは輪部縁に沿う周方向に長さを有する切り込みとし、他の平坦上面や載置底面には形成せず」と記載している。すなわち、この手続補正書と意見書では、出願人は切餅の上面や底面には切り込みを入れないことを主張している。佐藤食品工業の製品は上面と底面に切り込みがあるので、この手続補正書と意見書の内容で登録された場合、本特許に抵触しないことになる。 しかし、この手続補正は審査官により却下された。その理由として審査官は、手続補正は出願時の明細書や図面に記載されている内容でなければならないが、上記の手続補正の内容はそれを満たしていないことを指摘している。そのため出願人は上記内容とは異なる手続補正書を再度提出し、その後複数の応答の結果、特許4111382の内容で登録された。 原告が特許の審査過程で上面や底面には切り込みを入れないことを主張していたことは特許の権利範囲に影響するかどうかという論点に関し、地裁判決は、このことは直ちに請求の範囲の解釈に結びつくものではないという見解であった。高裁判決では、原告の上記主張はその後に撤回されたものであるから、それに拘束される筋合いはないと判断した。
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