配偶子バンク
別名:冷凍動物園
英語:gamete bank、gamete storage
絶滅危惧種の保存や人工繁殖の研究などを目的として、動物の精子や卵子などの配偶子を半永久的に保存する施設のこと。日本では、神戸大学の楠比呂志准教授が、1993年に研究室内に設置したのが始まりとされる。
配偶子バンクにおいては、精子や卵子などを動物園、水族館などから集め、特殊な容器に入れて液体窒素で凍結させる手法がとられている。配偶子の冷凍保存は、ヒトや家畜などでは盛んに研究されてきたが、絶滅危惧種を含む野生動物に関しては知見が少なく、研究施設の充実が求められている。
2013年8月に京都大学や京都市動物園などの研究グループは、凍結乾燥(フリーズドライ)の手法を用いた配偶子バンクを設立することを発表した。この手法では、5年間保存された精子でも人工授精に成功したことが発表されている。
また、日本動物園水族館協会(JAZA)は神戸大学と提携し、2014年3月から、横浜市繁殖センターで配偶子バンクの運営を始めることを発表した。
配偶子の凍結保存は国外でも研究されており、例えばドイツのライプニッツ動物園・野生動物研究所(IZW)は、2007年から「ネコ科配偶子レスキュープロジェクト(Felid Gametes Rescue Project)」を行ってきた。IZWは2013年2月に、絶滅危惧種を含むネコ科の複数の動物について、未熟な卵母細胞を多く含む卵巣皮質の凍結保存に成功したと発表した。
関連サイト:
横浜市繁殖センターの事業詳細 - 横浜市
Cryopreservation: A chance for highly endangered mammals - Science Daily
れいとう‐どうぶつえん〔‐ドウブツヱン〕【冷凍動物園】
冷凍動物園
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/08 08:53 UTC 版)
冷凍動物園(Frozen zoo)は、DNA、精子、卵子、胚等の動物由来の遺伝物質を貯蔵するための施設である。収集された遺伝物質は長期間の保存に適した極低温で貯蔵される。種子等、植物由来の遺伝物質も収集する施設もある。
サンディエゴ動物園等のいくつかの動物園[1]や Audubon Center for Research of Endangered Species等の研究プログラム[2][3]は、絶滅危惧種の遺伝的多様性を守るためや、タスマニアタイガー[4]やマンモス[5]等の絶滅種を将来再び蘇らせることを目的として、遺伝物質を低温保存している。
San Diego Zoo Conservation Researchの冷凍動物園では、動物と植物から収集した生体物質を1976年から-196℃の液体窒素で保存している[6]。現在のコレクションは、800以上の種及び亜種の8,400サンプルに上る[7]。San Diego Zoo Conservation Researchの冷凍動物園は、アメリカ合衆国やヨーロッパの動物園によるFrozen Ark等の類似のプロジェクトの元祖となっている[8][9]。しかし、世界中でも冷凍動物園の数は1ダースにも満たない[3]。
シャールジャのUnited Arab Emirates Breeding Centre for Endangered Arabian Wildlife (BCEAW)では、Felis silvestris gordoni(ヨーロッパヤマネコの亜種)やアラビアヒョウ等の絶滅の危機に瀕する動物の胚を保存している[10]。
サンプルの作成
オスは精子を過剰に生産するため、冷凍動物園のために採取するのは容易である。精子は死後でも採取することができる。メスの卵子は通常は数が少ないが、ホルモン療法によって、卵母細胞の数を種により10個から20個に増やすことができる。胚は回復力が強いため、卵を孵化させてから冷凍保存するところもある[10]。
サンプルの利用
冷凍動物園のサンプルは永久に保存することが可能であり[3]、人工授精や体外受精、胚移植やクローニングに用いられる。冷凍動物園を利用した人工授精は、遺伝子の改良や近親交配の防止にもなる。
技術の発展によって、保存状態の良くないサンプルでも遺伝子を扱うことができるようになったが、自然に帰すほどに成功するためには、最新の技術の他に十分な量の管理されたサンプルが必要になる[10]。
関連項目
出典
- ^ Dan Collins (2002年10月14日). “San Diego's Frozen Zoo”. The Associated Press and CBS News. 2010年4月28日閲覧。
- ^ “Species Survival Center”. Audubon Nature Institute. 2010年4月28日閲覧。
- ^ a b c “Frozen Zoo”. Audubon Nature Institute. 2010年4月28日閲覧。
- ^ Margit Kossobudzka (2002年10月14日). “Wyginął, a teraz powraca”. Gazeta Wyborcza.pl. 2010年4月26日閲覧。
- ^ Jan Sochaczewski (2007年10月12日). “Zamrożone mamuty powrócą do świata żywych”. Dziennik.pl. 2011年2月20日閲覧。
- ^ Magdalena Pecul (1997年12月). “ZAMROŻONE ZOO”. „Wiedza i Życie”. 2010年4月26日閲覧。
- ^ “Chill Out: Frozen Zoo Aiding Conservation Projects”. San Diego Zoo. 2010年4月26日閲覧。
- ^ “Scientific Meeting - The Frozen Ark Project”. ZSL London Zoo. 2010年4月26日閲覧。
- ^ “Welcome to the Frozen Ark”. The Frozen Ark Project. 2010年4月26日閲覧。
- ^ a b c F.J. de Haas van Dorsser MA VetMB MRCVS. “The Frozen Zoo: Breeding Centre for Endangered Arabian Wildlife, Sharjah, UAE”. Arabian Wildlife. 2010年4月26日閲覧。
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