全体の論旨の把握
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 06:31 UTC 版)
まず、論旨の把握に関しては、以下のワークシート1に記載のような「論文で取り上げる問題の問題設定とその答え」に関する情報を論文中から抽出する必要がある。これらの情報のうち多くは、アブストラクトやイントロダクション等から得られる。 ワークシート1:論文で取り上げる問題の問題設定とその答え (1)どのような問題をどのように取り組もうとするのか ⇒ (2)これから報告する問題がなぜ重要なのか(≒その問題への先行研究で未解決であったところ等の指摘) ⇒ (3)これから報告する問題はどのような問題の一部なのか(≒関連した先行研究の流れの上での位置付け) ⇒ (4)筆者らはその問題にどのような答えを与えたのか(どのように解決したのか) ⇒ 言い換えれば上記の情報が把握できれば「最低レベルの読解」は出来ている(論旨が追えている)ことになる。この中で特に重要な情報は、意外と思われるかもしれないが、「何をつかって問題を解決するのか」「なぜそれで問題を解決できるのか」ではなく、「その論文の究極の目標は何か」と「究極の目標に近付くために、その論文ではどういう問題を解決するのか」、つまり問いの部分である。まともな論文であれば、問いの部分と解の部分がしっかり対応しているように書いてあるため、問いの部分が理解できれば結果自体は概ね予想の範囲内となるように(どんでん返しがないように)書かれている。そのため、「忙しい場合には、どういう問題に取り組んでどういう答えを得たのかだけを大雑把にでも理解すれば、とりあえず読んだことにしてもよい」と言うものもある。論旨の把握は、論文をI、M、R、Dに分解できれば機械的に出来るため、「研究方法」の講義においては、論文をI、M、R、Dに分解するワークが行われることがある。 論文の内容をもう一段掘り下げる場合には、ワークシート1で抽出された情報の肉付けになる情報として、以下のワークシート2に掲げるような「問題解決の技法」にかかわる情報を抜き出していく必要が生じる。 ワークシート2:問題解決の技法(筆者らの与えた答えが「何故正しいのか」の分析) (1) ⇒ (2)問題を解決するにあたって、どのような実験を行ったのか ⇒ (3)その実験を行うことでなぜ問題が解決できるのか ⇒ (4)実験の結果どのようなデータが得られたのか ⇒ (5)そのデータから、どのような推論を経て筆者らの答えに辿り着いたのか ⇒ 「論文の構造」に着目して上記の意味で「論旨を追うこと」は、英語自体の能力よりも重要である。無論(大半の論文がそうであるように)英語で書かれている論文の場合には、文レベルでの英語の読解能力が必要最低限のレベルに達していなければ論旨を追うことさえ難しいことは言うに及ばないため、そのレベルの能力は前提とされている。
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