元請責任
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 08:36 UTC 版)
病理組織診断が絶対的医行為であるとの法解釈が成り立つとすると、病理組織診断を医業として行うのは医師(歯科医師)でなければならず、検査所を擁する企業が病理診断することはできない。また医療機関ではない企業が受託し検査所で行われた病理診断に過誤が発生した場合は体制上の不備による過失も問われうる。 登録衛生検査所(または登録衛生検査所を擁する企業)は臨床検査技師法で規定された臨床検査技師の業務である「病理学的検査」(病理標本作製や細胞診スクリーニング等)を受託してきた。いっぽう、外注する医療施設の認識は診療報酬点数表の第3部の「病理学的検査」として診断が含まれていた。この「病理学的検査」の2重性は解消されないまま、20年以上が経過しているが、途中、病理診断に関する医療訴訟について、病理医ではなく、○○病理検査センターの名称が報道されるということがあった。そのため、受託した病理学的検査について病変の判断(病理診断と細胞診断)に関し登録衛生検査所(または登録衛生検査所を擁する企業)に元請責任が生じる可能性があるとの解釈がなされることとなった。 元請責任が明らかになった時点で医行為を含んでの病理学的検査の受託は中止すべきであったが、病理検査室のない病院や診療所の病理学的検査は受託中止等の措置は現実的ではなかった。あまりにも大きく、重かったため、脱輪を直すことはできなかった。 事例から元請責任が明らかとなったので、登録衛生検査所では医療過誤につながらないように、予防的に、病理専門医・細胞診専門医が行った診断・報告書内容に踏み込んでチェックしてきたという。報告書を作成する病理医にとっては、登録衛生検査所からの委託業務であるため、登録衛生検査所(の技師)がチェックしてくれるであろう、または、なにかあったら守ってくれるだろうという甘えがなかったとも言い切れない。うっかり病理診断やとんでも病理診断があった場合、病理診断を委託した登録衛生検査所が責任を問われることになり、そのような報告書が多い病理医と委託契約した責任(不法行為本人責任)も問われかねない。衛生検査所が病理診断過誤を起こした病理医に賠償請求することもありうる。元請責任という場合、そのような意味が含まれていることも知っておきたい。 病理診断科は標榜診療科となった。病変を判断する病理診断は医行為である。病理専門医、細胞診専門医が作成する病理診断報告書は、当然診療録に準じて扱われることになる。元請責任を根拠にした、技師による報告書書き換えは生じえない。 病理診断は医行為である。検査センターは医療機関ではない。したがって検査センターで病理医が病理標本を見て報告書を作成したとしてもそれは病理医の意見または助言であり、病理診断ではない。臨床医が病理学的検査報告書に基づいて病変を判断しているのであり、診療報酬上も病理判断料(N007)が算定されている。検査センターの病理学的検査報告書が診断ではないと明確になったので、今後、検査センターは病理学的検査の責任、病理医は意見・助言の責任、臨床医の判断責任等について(学会・行政・司法で)整理されていくものと期待される。
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