僭越ながら
別表記:僭越乍ら
「僭越ながら」とは、ビジネスシーンなどで「分不相応な出過ぎた振る舞いですが(させていただきます)」という意味で用いられる表現である。基本的には「目上の人を差し置いて自分が行う」という謙遜(へりくだり)の意味を示す。
「僭越ながら」の使い所は基本的には「謙遜」であるが、場合によっては「恐縮」あるいは「光栄」の気持ちを示す表現としても用いられる。
「僭越+ながら」の具体的な意味
「僭越」は「身の程を越えた出過ぎた振る舞いである」さまを意味する表現である。「ながら(乍ら)」は、逆接の意味で用いられる接続助詞である。「~ではあるが」と言い換えられる。
つまり、「僭越ながら」は、かんたんにいうと「身の程を越えた出過ぎた振る舞いである(のだが、あえて行う)」という趣旨の言い方である。
なお、「謙遜」は、「僭越だ」「僭越なことを言う」「僭越さを感じる」「僭越とは思いながらも」といった表現にも使える。必ずしも自分の行動について述べる表現とは限らず、他人を評して「僭越な振る舞いをするやつだ」と表現するような言い方もできる。
「僭越ながら」の用法・用例
「僭越ながら」は、結婚式や祝典などで「一同を代表して(恐縮ながら)私が」と述べる意味でよく使われる。一種の決まり文句である。「僭越ながら~」を使う場合の注意点
たとえば「僭越ながらご指名を頂きまして~」のような言い方をした場合、「僭越ながらご指名」と発言した時点では「相手が自分を指名するという行為は僭越だ」と述べているように聞こえなくもなく、そのように受け取られて気分を害する人がいないとも限らない。また、「僭越」という言葉は、その根本に「身分や権限を越え出て(~する)」という意味合いを含む。その意味では、たとえば「僭越ながらメールでのご挨拶にて失礼いたします」「僭越ながらお断りします」のような言い回しは、果たして適切な表現かどうか、疑義が残る。
「僭越ながら」はたいていの場面で「恐縮ながら」「恐れながら」「失礼ながら」などと言い換えられる。言い方に懸念が残る場合には「恐縮ながら」等の表現を使ったほうが無難といえる場面は多い。
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