個々のゲニウス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/17 03:43 UTC 版)
どんなものでも神性があるとされればゲニウスという言葉を使ったが、より高位のゲニウスにはそれぞれ独自の名前が付いていた。ゲニウスは、一般に知られていない個々の場所や人によく使われた。すなわち、社会の最小単位である家族やその家である。家、扉、門、通り、地区、氏族などにそれぞれのゲニウスがあるとされた。ローマの神々の階層はギリシア神話にならい、人間の家族をモデルとしている。父であるユーピテルは家父長制社会と同様に最高神とされ、母であるユーノーは神の女王とされた。この最高の神々の統一体が個々の家庭のゲニウスに細分化された。そのため、個々の女性のゲニウスは女性の子を産む能力を表し、ユーノーに呼応している。男性のゲニウスはユーピテルに呼応している。 ユーノーは次のような様々な称号を伴って崇拝された。 Iugalis - 結婚 Matronalis - 既婚女性 Pronuba - 花嫁 Virginalis - 純潔 ゲニウスは守護霊とされることも多く、守護してもらうためにそれをなだめる必要があるとされた。例えば、乳幼児を守護してもらうために Cuba(眠らせるゲニウス)、Cunina(ゆりかごのゲニウス)、Rumina(授乳のゲニウス)の機嫌をとる必要があった。これらのゲニウスがへそを曲げて役目を果たさないと、その乳幼児は危険にさらされる。 家庭内の祭壇であるララリウムは、ポンペイの数百の家(ドムス)で見つかっており、主に煙を外に逃がす開口部が天井にあるアトリウムの周辺にあった。ララリウムには常に同じ主題のフレスコ画があった。左右にラレースが描かれ、中央にその家族のゲニウス(1体または男女2体)が描かれている。そして、その下にゲニウスに向かって這っている1匹か2匹の蛇が描かれている。カンパニア州やカラブリア州には、ゲニウスとの関連で、幸運をもたらす蛇を飼う習慣が保持されていた。ララリウムとは別のフレスコ画 (Casa dei Centenario) では、ヴェスヴィオ山の下に草地の蛇が描かれ、アガトダイモーン(よいダイモーン)だと記してある。ダイモーンはギリシア版ゲニウスとみなされていた。
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