保険におけるモラル・ハザード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 22:23 UTC 版)
「モラル・ハザード」の記事における「保険におけるモラル・ハザード」の解説
「モラル・ハザード」は本来は保険業界で使われていた用語で、「保険によって事故が補償される」という考えが醸成され、被保険者のリスク回避や注意義務を阻害するという現象を指す。この場合の例としては以下が挙げられる。 自動車保険において、保険によって交通事故の損害が補償されることにより、「軽度の事故なら保険金が支払われる」という考えが醸成され、加入者の注意義務が散漫になり、かえって事故の発生確率が高まる場合。 金融において、金融機関の倒産に伴う連鎖倒産を防ぐため、あるいは預金保護のために行う政府の資金注入を予見し、金融機関の経営者、株主や預金者らが、経営や資産運用等における自己規律を失う場合。この実例がコスモ信用組合である。 医療保険において、診察料の半分以上が保険で支払われるために、加入者が健康維持の注意を怠って、かえって病気にかかりやすくなる場合。 「火災保険をかけたために、注意義務を怠り、結果として火事のリスクが高まる」などのリスク回避を疎かにすることを「モラール・ハザード」(morale hazard)、「火災保険をかけておいて放火する」などの意図的に事件を起こすことを「モラル・ハザード」(moral hazard)と分ける場合もある。 特に、保険金詐取を目的として故意に惹起される事故をモラルリスク(moral risk)と言い分ける。保険金詐欺行為は刑法246条の詐欺罪に該当する犯罪行為である。 また、一部の社会主義国で見られるような努力しても努力しなくても生活水準に変化や差があまり生じないのことから、全体が怠けていくことの例えにも用いられる。 2008年のサブプライムショックを緩和するため、アメリカ合衆国連邦政府が金融機関に公的資金を投入しようとした時に、アメリカ合衆国議会で「モラルハザードが発生する」との反対意見が出て、予算案が否決されたこともある。
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