保護と科学的解析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/07/19 13:51 UTC 版)
板は、特にわずかでも湿気が残っていると経年変化で反ったり、ひびが入ったりすることがある。このため、19世紀には板からキャンバスなどの近代の支持体に移植する技術が開発され、多くの板絵が移植された。 板は現在の美術史家にとってキャンバスよりも有用な素材である。ここ数百年で木材の情報を得る技術は非常に発展した。板絵に使用されている板を解析することにより多くの贋作が発見され、間違って考えられていた制作年度の修正につながった。専門家は板絵に使用されている樹木の種類を判別でき、このことが絵画が制作された場所を特定する一助となる可能性もある。放射性炭素年代測定と年輪年代学によって、板のほぼ正確な制作年や、板に使用された材木がどの地域で産出されたものなのかを知ることができる。イタリアの板絵は自国の木の板に描かれることが多く、一部ダルマチア産の材木も使用されており、その種類はポプラがほとんどだが、クルミ、クリなども使用されている。ネーデルラントでは15世紀初頭に材木が不足したため、初期フランドル派の名作の多くがバルチック周辺やポーランド産のオークが使用されている。オークはワルシャワ北部でカットされた後、ヴィスワ川からバルチック海を経由して、ネーデルラントに輸入された。南ドイツの画家たちはマツを使用することが多く、後には輸入されたマホガニーを用いてレンブラントやゴヤが板絵を描いた。 年輪年代学によって樹木が伐採された正確な年を知ることができる。しかし実際には数年の誤差が生じることもある。そして小さな板絵で、材木の中心部分からとられた板に描かれている場合には、カットされた外側部分にどれだけの年輪があったのかを知ることはできないのである。 「Panel Paintings Initiative」という数カ年計画のプロジェクトが、ゲッティ文化財保存修復研究所、ゲッティ財団、J・ポール・ゲティ美術館の協同で開始された。このプロジェクトは、複雑な構成で描かれた板絵を修復することができる高い技術を持った絵画修復家や技術者が減少することによって、貴重な板絵のコレクションが今後数百年のうちに失われてしまうのではないかという、近年広まりつつある危惧に対応しようという試みである。プロジェクトの詳細はゲッティのウェブサイトに記載されている。
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