依頼者の被害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 15:14 UTC 版)
非弁提携が依頼者(国民一般)に与える影響には種々のものがあるが、以下にその一例を挙げる。 弁護士と連絡が取れない 非弁提携弁護士の業務はしばしば非弁業者に乗っ取られているので、当該弁護士は自分が受任した事件について何も把握しておらず、依頼者との連絡も非弁業者任せとなる。依頼者から見れば、弁護士に依頼したにもかかわらず、事件処理について弁護士本人と全く相談ができない事態となる。 現に、弁護士会に「弁護士と連絡が取れない」「事務員だけしか出てこない」「すぐ弁護士から事務員に代わる」等の苦情が寄せられる場合、非弁提携の可能性が高くなると指摘されている。 預り金の費消 弁護士は、依頼者の預り金を分別管理する義務を負っているから(預り金等の取扱いに関する規程)、弁護士自身によって正常に運営されている法律事務所に依頼する限り、依頼者は預り金に関するトラブルに遭遇することは稀である。 これに対し、非弁業者はそのような義務を負っておらず、他に預り金を適切に管理する動機もないから、返還すべき預り金をしばしば費消してしまう。これにより、非弁提携弁護士の依頼者は、預り金の返還を受けられなくなるだけでなく、任意整理で合意した月々の弁済の代行を非弁提携弁護士に依頼していたような場合には、弁済が滞り、期限の利益を失って新たな訴訟を提起される等の不利益を受けることになる。 不適切な事件処理 弁護士は誠実義務(職務基本規定5条)を負い、依頼者の意思を尊重しつつ依頼者の正当な利益を実現する義務(同21条、22条1項)を負う。そのため、弁護士は、依頼者の意向を聞き取り、法律上可能な範囲で最善の方策を提案することが通常である。 他方、非弁業者が関心があるのは自己の利益だけであるから、手間を掛けてまで依頼者にとって最善の法的手段を選択する動機がない。そのため、依頼者の意向に関わらず、合理的な理由もなく、安易に手間の少ない解決策しか提示しない傾向がある。例えば、債務整理案件においては、本来民事再生手続を利用すべき場合でも簡単な任意整理を無理に勧めるといった傾向がある。 割高な報酬 非弁業者の利益は、依頼者に対して直接請求されるか、または依頼者に請求される弁護士報酬に転嫁される。法テラスや弁護士会などの適法なルートで弁護士を探せばその分のコストは生じないから、非弁提携弁護士の依頼者の負担は、非弁業者に支払われるマージンの分、正常に運営されている法律事務所に依頼する場合に比して高額になる。 実際に、非弁業者経由で提示された弁護士報酬が、当該弁護士のホームページに掲載されている料金よりも一定割合で高額になっており、明らかに周旋が疑われるケースがあるという。
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