体験の統合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/25 14:24 UTC 版)
過去の記憶に管理されている状態においては、体験を健忘していたり、解離していたり、あるいは記憶を無意識に「症状で語る」ということを、患者はおこなっている。これは体験が患者の主体のもとに統合されていない状態でもある。過去の開示によって、それら散逸していた体験が患者の主体の管理のもとへ統合されていく。 往々にしてこの時期の患者は、積極的な過去の探索に乗り出す。郷里に帰って生家を訪ねたり、幼児期の自分を知っている人々を訪問して自らの過去に客観的な叙述を加えようとしたり、またそうすることによって自分の健忘による空白を埋めようとする。 こうして体験が統合されていくにつれて、患者は自分の外傷の原因、自分を虐待した犯人がわかってきたりして、非常な怒りや憎しみ、あるいはそれによって失われた時間や人生に対しての悲しみを覚えるようになっていく。自己の存在そのものを患者が受け入れられないところまで追い詰められているために、加害者(多くの場合は親)の嘘の仮面をはがそうと躍起になったりする。 しかし、このとき加害者を責めるのは、そのような過去を加害者もすなおに認め、率直に謝り、それによって患者との関係を修復し新たな段階へ進むことを期待しているから、と考えられる。もしそのような気持ちが患者になければ、加害者には見向きもしなくなることもある。 逆に加害者は、はじめからすなおに謝罪して患者と新たな関係を結ぼうとすることはむしろ稀で「そんなことはなかった」「それはお前の記憶違いである」などといったかたちで否認してしまうのがほとんどである。これも、前述したような「受容のための五段階」によるものである。 現実的には、できるだけ否認をしないで、早く事実を認めて謝ってしまった方が、被害者にも加害者にとっても早期の回復と解決のためには有効である。
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