伝統的な減法混合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 13:27 UTC 版)
RYB(英語版)(赤、黄色、青)はかつての減法混合における三原色(色料の三原色)であり、近代の科学的な色彩理論に先立つものである。美術および美術教育において使われ、特に絵画では盛んに使われた。 RYBは標準的な色相環の中で正三角形をなす。またこの三原色を混ぜ合わせてできる二次色(VOG:紫、オレンジ、緑)がもう一つの三角形をなす。特定の色相環の中で等距離にある三色が「色の三角形」をなすが、知覚的に均等に配された色相環の中ではRYBもVOGも等距離にはならない。RYB色相環においては、これらが等距離になるように色相環が作られていた(ゲーテの色彩論も参照)。 画家たちは長年、パレットの上に三つ以上の「原色」の絵具を置いて色を混ぜていた。たとえば赤、黄色、青、そして緑が「四つの原色」とされた。この四色は現在でも心理的な原色として認知されている が、赤、黄色、青が三つの心理的な原色として挙げられ、白と黒が第四・第五の原色に加えられることもある。 17世紀後半にアイザック・ニュートンがプリズムにより太陽光を分光させてスペクトルを取り出す実験を行ったが、18世紀の色彩理論の専門家たちはこれを意識して赤・黄色・青を三原色と考えた。これらは基本的な感覚の性質と推定され、すべての物理的な色についての感覚や、顔料や染料の物理的な混合の中には、この三色が混ざっていると考えられた。しかし、赤・黄色・青の三色の混合では他のすべての色を作ることはできないという多くの反証があったにもかかわらずこの理論はドグマと化し、今日にまでこの考えは残っている。 赤・黄色・青の三色を原色として使った場合の色域は比較的小さなものとなり、なかでも鮮やかな緑・シアン・マゼンタを作ることが困難という問題があった。これは知覚的に均等に配された色相環においては赤・黄色・青は間隔が偏っていることが原因であった。こうしたことから、今日の三色印刷・四色印刷やカラー写真ではシアン・マゼンタ・イエローが色料の三原色として使用される。 絵画においては色の合成方法が印刷とは異なる為、CMYKが普及した現在でも、多くの画家はシアン、マゼンタ、イエローの絵具の混合によって作れない色を呈する絵具をパレットに加える。ある者はパレットに置く三原色に印刷業者が使う、より幅広い色の作れるシアン・マゼンタ・イエローを置き、またある者は色域を広げるために六つ以上の絵具を原色として使用している。
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