代数的半順序集合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/18 17:52 UTC 版)
任意の要素がコンパクト要素の上限として表せるような半順序集合は、代数的半順序集合と呼ばれる。有向完備半順序集合であるこのような半順序集合は、領域理論において頻繁に用いられる。 重要な具体例として、代数束がある。L の任意の要素 x が x 以下のコンパクト要素の上限であるような完備束 L のことを代数束という。 以下が典型的な例である(「代数的」という名前の動機になる): 任意の代数系 A(例えば、群、環、体、束など;あるいは何の演算もないただの集合でもよい)に対して、Sub(A) を A の部分構造全体の集合、すなわち、すべての演算(群の加法、環の加法と乗法など)について閉じている A の部分集合全体とする。ここで、部分構造の概念は代数系 A が零項演算を持たない場合における空の部分構造も含む。 このとき: 集合 Sub(A)は、集合の包含関係による順序の下で束を成す。 Sub(A) の最大元は集合 A 自身である。 Sub(A) の任意の元 S, T に対して、S と T の最大下界は、S と T の集合の意味での共通部分である;最小上界は、S と T の合併により生成される部分代数である。 集合 Sub(A) は完備束でもある。任意の部分構造の族の最大下界は、その共通部分である。 Sub(A) のコンパクト要素は、A の有限生成部分構造にほかならない。 任意の部分構造は、その有限生成部分構造の合併である;したがって、Sub(A) は代数束である。 さらに、ある種の逆も成り立つ:任意の代数束は、ある代数系 A に対する Sub(A) と同型である。 他にも、普遍代数において重要な役割を果たす代数束がある:任意の代数系 A に対して、A 上の合同関係全体の成す集合を Con(A) と表す。A 上の合同関係はそれぞれ直積代数 A×A の部分代数であるから、Con(A) ⊆ Sub(A×A) である。ここで再び、 Con(A) は、集合の包含関係による順序の下で束を成す。 Con(A) の最大元は集合 A×A であり、定値準同型に対応する合同である。最小の合同は A×A の対角であり、同型写像に対応する。 Con(A) は完備束である。 Con(A) のコンパクト要素は、有限生成合同関係にほかならない。 Con(A) は代数束である。 ここでもまた逆が成り立つ:G. Grätzer と E. T. Schmidt の定理から、任意の代数束はある代数系 A に対する Con(A) に同型である。
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