他界へ行く生者の物語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/04 04:21 UTC 版)
旅立つ先は主に死後の世界であるが、文学では生者が他界へと行って戻って来るという神話、説話が見られる。日本でいえば、イザナギがイザナミを連れ帰るために、黄泉の国へ行って帰ってくる『古事記』の話が有名である。 アイヌにも同様の口承文学はみられ、沙流郡平取町のアイヌ・カレピアが伝えた話として、ある酋長夫婦が和人の国へ交易へ出かけた帰りに遭遇したこととして、つたいづたいで海岸に泊まりながら移動し、ある崖山の浜に舟を置き、一休みしていると、大津波が寄せて来た。妻の手をとり、崖を上って避難する中、洞窟があり、逃げ込むとその奥は明るく(洞窟の外は夜)綺麗な村があった。村人に話すと、ここが死者の国であり、ここの食物を口にすると人間界に帰れないことを説明された。また死者の国だが、クマもシカもいるため、狩りで食べていける上、生前使っていた道具ももっていけるといわれた。そのため、何も食べず、急いで帰るようにと死者の忠告を受け、あそこは悪魔が住んでいる浜辺で、津波も悪魔が見せた幻であるから、舟も無事であると説明を受ける。帰りの途中、見知った老人と見知らぬ老人とすれ違うが、2人ともこちらの姿は見えない様子だった。夫婦はそのまま舟で生まれた村に帰った。 また、この文学的な描写は、20世紀のファンタジー文学の名作『指輪物語』、『ナルニア国物語』に見られる。現実での例は滅多になく、その少数が臨死体験などに見られる。その際、前述のような象徴を見聞きする体験を伴い、死後の世界の証明だと主張されることもあるが科学的検証の裏付けはない。
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