人工放射能に関する研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 04:28 UTC 版)
「木村健二郎」の記事における「人工放射能に関する研究」の解説
1937年、理化学研究所に仁科芳雄の主導で日本で最初の26インチサイクロトロンが建設された。仁科はサイクロトロンで発生させた速い中性子をウランとトリウムに照射する一連の研究を行った。この研究を進めるには、中性子を照射したターゲットから、生成した放射性核種を化学的な方法で分離する必要があり、熟練した化学者の協力が必要だったので、コペンハーゲン以来の親友である木村を共同研究者に選んだ。研究の要点は以下の3点である。 トリウム (Th232) に中性子をあててトリウム231を作る研究 ウラン (U238) に中性子をあてて新核種ウラン237を発見した研究 速い中性子によるウランの核分裂の研究 研究結果はネイチャー、フィジカル・レビュー、ツァイトシュリフト・フュア・フィジークの各誌上に発表され、国際的に高く評価された。3. の研究はアメリカのグレン・シーボーグとエミリオ・セグレも行ったが、仁科・木村グループの研究はこれに先行するものだった。 1940年5月3日付けの理研の仁科芳雄と木村健二郎等の論文には、ウラン238に高速中性子を照射した実験において核兵器の爆発によって生成することが知られているネプツニウム237を生成した ことが記され、同年、米国の物理学誌フィジカル・レビューに掲載された。また、同実験では、1回の核分裂で10個以上の中性子が放出され核分裂連鎖反応(超臨界)を伴うことが知られている対称核分裂による生成物 が生成されたことが、『Fission Products of Uranium produced by Fast Neutrons(高速中性子によって生成された核分裂生成物)』と題して、同年7月6日付けの英国の学術雑誌ネイチャーに掲載された。 戦後の1989年に来日したシーボーグは、東京で行われた講演の中で次のように述べた。 ところで、1940年私とSegréが研究を進めていた速い中性子によりウランを照射した際に起こる対称核分裂は、同じ年のもっと早い時点で日本の理化学研究所の仁科、矢崎、江副と東京帝国大学の木村、井川のグループによって発見されていたのである。
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