五度圏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/15 01:21 UTC 版)

五度圏(ごどけん、英語: circle of fifths)は、12の長調あるいは短調の主音を完全五度上昇あるいは下降する様に並べて閉じた環にしたものである[1]。
五度圏は F♯ / G♭ や D♯ / E♭ といった異名同音関係を利用することで環を形成しており、これは一般に平均律を前提としている[1]。純正な完全五度に基づくピタゴラス音律では異名同音を利用して閉じた環を形成することはできない[1]。例えば E♭ を起点として完全五度を12回上方向に堆積すると異名同音関係にある D♯ が得られるが (E♭ - B♭ - F - C - G - D - A - E - B - F♯ - C♯ - G♯ - D♯)、純正な完全五度(周波数比 3:2)による場合、この D♯ と E♭ は正確なユニゾンやオクターヴ関係にならず、ピタゴラスコンマ(約23.46セント)の差が生じる[2] [注釈 1] 。平均律では完全五度が純正音程よりも1/12ピタゴラスコンマだけ狭められているため、D♯ と E♭ が一致し、閉じた五度圏を形成することができる[3]。
五度圏はある調から他の調への「遠隔度」を視覚化するのに用いられる[1]。例えばト長調に対し五度圏上で隣接する5つの調(ホ短調、ニ長調、ロ短調、ハ長調、イ短調)は和声的に近い関係にある近親調である[4]。一方、五度圏上で最も離れた嬰ハ長調とは和声的に遠い関係にあり、その音階上の三和音に共通するものが1つもない[5]。
注釈
- ^ 12の純正な完全5度の周波数比
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♯ ♭ 長調 短調 0 (12)=0 ハ(C) イ(Am) 1 (11) ト(G) ホ(Em) 2 (10) ニ(D) ロ(Bm) 3 (9) イ(A) 嬰ヘ(F♯m) 4 (8) ホ(E) 嬰ハ(C♯m) 5 7 ロ(B)=変ハ(C♭) 嬰ト(G♯m)=変イ(A♭m) 6 6 嬰ヘ(F♯)=変ト(G♭) 嬰ニ(D♯m)=変ホ(E♭m) 7 5 嬰ハ(C♯)=変ニ(D♭) 嬰イ(A♯m)=変ロ(B♭m) (8) 4 変イ(A♭) ヘ(Fm) (9) 3 変ホ(E♭) ハ(Cm) (10) 2 変ロ(B♭) ト(Gm) (11) 1 ヘ(F) ニ(Dm) (12)=0 0 ハ(C) イ(Am) 調長調 短調
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五度圏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/02/26 14:42 UTC 版)
五度圏は5度(もしくは4度)の和声進行を通じて和声の多様性を供給するもので、ジャズピアノでは非常に重要である。ジャズのメロディやメロディ的なパートの最後の4小節では、コード進行は主音へと続く最後の4つの円上のステップに対応する「III, VI, II, V, I」となる。 うまく配置された和声進行はどんな聴き手の耳にも正しく聴こえるが、熟練したピアノ奏者はこれを五度圏上のステップとして認識する。ジャズではしばしば、小節毎に1回コードが変化する。最も単純な例では、同じ主和音の2つの小節は「I - V / I」として演奏される。この行ったり来たりの例はメロディにおいて休止や方向転換が明らかな時にしばしば適用される。五度圏のさらなる使用は、走り幅跳びの選手が踏み切りまでの歩数を数えるようにして、複数ステップ先を数え、ないしはゴールとなる主和音から逆算するということになる。訓練を積めばこれは第2の天性となる。 全てのピアニストが曲を移調する才能に恵まれているというわけではないが、五度圏にはこの曲を移調する能力を高めるというもう1つの利点がある。コードの「計画」や移行では、音階上で4度にボイシングされ、「I - V - I - V」(主音 - 属音 - 主音 - 属音)という和声パターンがしばしば繰り返される。 『枯葉』や『サマータイム』のような、複雑なメロディラインや反復パターンを持たない曲に和声を付けるのにも五度圏が利用できる。これはメロディ全体に対して、円に従って新しい和音を割り振るということではない。それが適切な移行となる場所で、もしくは複数小節にわたって、五度圏の断片である「I - V」の進行を定期的に挿入するということである。多くのスタンダード・ナンバーでは、このテクニックはより継続的に適用可能で、優れた和声付けを行うことができる。『星影のステラ』のような曲では、五度圏は大半の移行で間違いなく有用である。
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