二酸素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/27 03:16 UTC 版)
「分子軌道ダイアグラム」の記事における「二酸素」の解説
二酸素(英語版)のMOによる取り扱いは、pσ分子軌道がエネルギー的に2π軌道よりも低くなるため、これまでの二原子分子のものとは異なっている。これは、2s分子軌道と2pz分子軌道との間の相互作用が関係している。窒素分子までの等核二原子分子では、2s軌道から出来る結合性のσ2s(酸素分子のダイアグラム図中の2σg)と2p軌道から出来る結合性のσ2p(同3σg)のエネルギーが比較的近い。このため両者の軌道は混じり合い再構成され、エネルギーの低いσ2sはさらにエネルギーが低く、エネルギーの高いσ2pはさらにエネルギーが高くなっている。この結果、窒素分子までの等核二原子分子ではエネルギーの高くなったσ2pがπ結合の軌道であるπ2p(図中1πuxおよび1πuy)よりも上のエネルギーに位置していた(なお結合性のσ軌道は、対称性が異なるため反結合性軌道やπ結合の軌道とは混じり合わない)。原子軌道でのs軌道とp軌道のエネルギー差を考えると、これは周期表を右に行くほど大きくなる。この結果、上述のσ2sとσ2pのエネルギー差も次第に大きくなり、両者の混じり合いも周期表の右に行くほど小さくなる。σ2s軌道との混じり合いによりπ2p軌道よりエネルギーが高く押し上げられていたσ2p軌道が周期表を右に行くに従い下がっていき、本来の位置であるπ2p軌道の下へと入れ替わるのがこの酸素分子となる。8個の電子を6つの分子軌道へ分配すると、最後の2個の電子が2pπ*反結合性軌道に縮退した対として残り、その結果として結合次数は2となる。二ホウ素や酸素分子の最安定状態のように対を作っていない2つの電子が同じスピンを持つ状態は三重項と呼ばれており、スピンが打ち消し合わないため磁性を示す。特に酸素分子は我々の身近に存在するため昔から詳しく調べられており、例えばスピンが同じ方向を向いている三重項酸素(英語版)と、HOMO電子が1つの軌道に逆向きのスピンで対となっている一重項酸素とのエネルギーや反応性の違いなどが古くから知られている。 O2+ (112.2 pm)、O2 (121 pm)、O2− (128 pm)、O22− (149 pm) の順に結合次数は低下し、結合長は増加する。
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