事務管理の成立要件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 06:04 UTC 版)
民法上の事務管理の成立要件については697条1項に規定されている。民法697条の「義務なく他人のために事務の管理を始めた者」を管理者と呼ぶが、民法697条でいう「他人」は事務管理開始後の法律関係においては「本人」と呼ばれる。 ある者(管理者)が他人の事務の管理をすること「他人」は自然人のみならず法人であってもよい(大判明36・10・22民録9輯1117頁)。管理者においては最初から事務管理の相手方たる本人が具体的に誰かを了知している必要はない。 「事務」は客観的な点において他人の事務に属するものでなければならず、中性の事務(他人の事務か自己の事務か問題となる場合)においては管理者の管理上の意思について判断する必要がある。事務の内容は法律行為か事実行為か、また、継続的か単発的かを問わない(大判大8・6・26民録25輯1154頁)。 「管理」は保存行為・管理行為はもちろん、処分行為をも含むが処分行為が有効とされるためには本人の追認を要する(大判大7・7・10民録24輯1432頁)。 事務の管理について管理者に私法上の義務が存在しないこと私法上の義務があるがそれを超える場合には、その部分について事務管理が成立しうる。管理者に公法上の義務が存在する場合にも事務管理は成立しうる。 管理者が本人のためにする意思をもっていること事務管理意思と呼ばれることもある。主観的に管理者において自分のためにする意思が併存していても差し支えない(大判大8・6・26民録25輯1154頁)。 管理者による管理が本人の意思又は利益に適合したものであること本人の意思・利益に適合しなければ事務管理は成立しない(通説。700条但書参照)。事務管理時の事情により判断される(大判昭8・4・24民集12巻1008頁)。 事務管理の継続中にこの要件を欠くことが明らかとなったときは原則として事務管理を中止しなければならない(700条但書)。ただし、自殺しようしている人を救助する場合など、本人の意思が公序良俗・強行法規に違反するものである場合には、その意思にかかわりなく事務管理は成立しそれを継続できる(大判大8・4・18民録25輯574頁)。 なお、事務管理の成立要件を欠く場合にも本人の追認により有効な事務管理となる(後述の管理者が第三者に対して無権代理行為を行っていた場合とは理論上異なるとされる)。
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