乳白色の肌の秘密
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 04:38 UTC 版)
藤田は絵の特徴であった『乳白色の肌』の秘密については一切語らなかった。近年、絵画が修復された際にその実態が明らかにされた。藤田は、硫酸バリウムを下地に用い、その上に炭酸カルシウムと鉛白を1:3の割合で混ぜた絵具を塗っていた。炭酸カルシウムは油と混ざるとほんのわずかに黄色を帯びる。さらに絵画の下地表層からはタルクが検出されており、その正体は和光堂のシッカロールだったことが2011年に発表された。 タルクの働きによって半光沢の滑らかなマティエールが得られ、面相筆で輪郭線を描く際に墨の定着や運筆のし易さが向上し、膠での箔置きも可能になる。この事実は、藤田が唯一製作時の撮影を許した土門拳による1942年の写真から判明した。以上の2つが藤田の絵の秘密であったと考えられている。ただし、藤田が画面表面にタルクを用いているのは、弟子の岡鹿之助が以前から報告している。 反面、藤田の技法は脆弱で経年劣化しやすい。水に反応し、絵肌は割れやすく、広い範囲に及ぶ網目状の亀裂の発生が度々観察される。また、多くの藤田作品には地塗り表面に特徴的な気泡の穴が多数散見され(贋作にはこの気泡は無いという)、これは油絵の具に混ぜた炭酸カルシウムと油が反応して発生したガスの穴だと考えられる。
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