中比仲裁裁判所判断
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 21:56 UTC 版)
中国の九段線内側海域に対する歴史的権利の主張について、フィリピンは国連海洋法条約に基づきオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に、その違法性を申し立てていた。 2016年7月12日裁定が下り、仲裁裁判所は中国及び台湾の権利主張に「法的根拠がない」と判断した。フィリピンの「人工島周辺には排他的経済水域はない」という主張が認められると同時に、南沙諸島とスカボロー礁にある全てのリーフは、法的には排他的経済水域および大陸棚を生成しない「岩」と結論づけた。十一段線を主張してきた中華民国(台湾)の蔡英文政権は「裁定は台湾の権利を傷つけるもの」などと反発して軍艦を派遣しており、判決文に「中国の台湾当局」という表現があることにも立法院は抗議している。また、日本との紛糾を避けて7月に予定していた日台海洋協力対話を延期した。フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領はかねてから「判決の結果は誇示しない」意向を示していたため、「戦争という選択肢はない」として中国と二国間協議を開始すべくフィデル・ラモス元大統領を特使として訪中させると発表し、判決を不服とする中国側もこれを歓迎し、ラモス元大統領も受諾を表明した。ドゥテルテ大統領は就任後初の施政方針演説で南シナ海を「西フィリピン海」と呼ぶ一方、「中国海としても知られている」とするなど中国への配慮を打ち出した。同年10月20日、ドゥテルテ大統領と習近平中国国家主席(総書記)は判決を棚上げして各方面の協力で合意した。合意によりフィリピン漁民の操業が再開され、フィリピン領となる人工島の建設を中国が開始した。2021年5月5日、南シナ海の領有権を巡る中国の主張を否定した南シナ海判決についてドゥテルテ大統領は、「ただの紙切れにすぎない」「(判決は)役に立たない。ゴミ箱に捨てよう」と述べ、中国政府と同様の言い回しで判決を否定した。
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