一般言語学の理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/28 06:06 UTC 版)
「フーゴー・シューハルト」の記事における「一般言語学の理論」の解説
シューハルトは早くから言語・方言・下位方言などの区別が相対的なものに過ぎないと考えていた。言語は個人ごとに異なるものであり、その違いが伝播する様子を水面の波が広がるさまに例えた。このことをシューハルトは1870年の講義で述べており、ヨハネス・シュミットの波紋説(1872)より早かったが、シューハルト説が実際に出版されたのはシュミットよりずっと遅かった。 Über die Klassifikation der romanischen Mundarten. Graz. (1900). https://archive.org/details/berdieklassifik01schugoog. シューハルトは言語の歴史的研究を否定はしないが、当時の言語学が歴史的研究に重点を置きすぎていることに反対し、言語研究は現在から始めるべきであると主張した。また話者個人の心理に重点を置いた「言語心理学」(Sprachpsychologie)を提唱した。 シューハルトは1885年に小冊子『音法則について:青年文法学派に反対する』を公刊した。 Über die Lautgesetze. Gegen die Junggrammatiker. Berlin: Oppenheim. (1885). http://catalog.hathitrust.org/Record/008395485. この書物の中で、シューハルトは青年文法学派のいう音変化の法則が自然界の法則と異なって一回性のものであることを指摘した。また青年文法学派が音変化が例外なく起きるとしたことに反対した。 シューハルトにとって、音が人間の意思と無関係に変わるという説はロマン主義的な思いこみにすぎなかった。シューハルトによれば言語は過程(Vorgang)であって、発話する個人の性格・文化・年齢・性別などに依存する。音変化はある少数の語について特定の個人によって始められ、それが他の語や他の人間に広がるという新しいモデルを提出した。音法則は単に広がった後の状態を観察したものに過ぎなかった。 シューハルトはまた語源研究において音変化ばかりが強調される当時の風潮を批判し、個々の語の意味の変化の研究の重要性を説いた。その目的で語の地理的分布の研究の重要性を指摘した。これは後の言語地理学を予見するものであった。
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