ヴィデオ彫刻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/04 04:08 UTC 版)
多くのヴィデオ作家が作品の造形性に関心を払っていないことに不満を抱いていた久保田は、立体作品として成立するヴィデオ・アート、いわゆる「ヴィデオ彫刻」を手掛けるようになる。最初の作品は1975年の《ヴィデオ・ポエム》である。四角いブラウン管を袋で隠し、送風機で袋を有機的に膨らませ、無音で口を開閉する自身の顔の映像を袋についたジッパーの窓から覗かせた。 1975年から1990年にかけて、マルセル・デュシャンにインスピレーションを受けたシリーズ「デュシャンピアナ」を発表した。同シリーズを発表した1976、77年の2度の個展(ルネ・ブロック・ギャラリー)は成功し、久保田はヴィデオ彫刻の作家として広く知られるようになった。 「デュシャンピアナ」シリーズの延長で作られた《メタ・マルセル:窓》(1976-77)は、窓の奥に設置したテレビ画面のノイズを雪景色に見立てた作品だが、以降、ヴィデオの機械的特性と自然のイメージを重ね合わせた独自の表現に取り組むようになる。 1980年以降の作品の特徴としては、水や鏡などの反射する素材と、動きを導入するためのモーターの使用とが挙げられる。《河》(1979-81)や《ナイアガラの滝》(1985-87)では鏡の破片を散りばめた水路に実際に水を流し、《三つの山》(1976-79)や《枯山水》(1987-88)などでは鏡面素材を用いることで、映像の光を反射させるのみならず、鑑賞者や周囲の環境をも写し込んで作品化することに成功した。モーターを用いた作品でその効果が顕著な作例としては《自転車の車輪1、2、3》(1983-1990)があるが、小型液晶ディスプレイを取り付けた車輪を回転させ、映像と車輪の二重の運動によって重層的な時間表現を獲得した。
※この「ヴィデオ彫刻」の解説は、「久保田成子」の解説の一部です。
「ヴィデオ彫刻」を含む「久保田成子」の記事については、「久保田成子」の概要を参照ください。
- ヴィデオ彫刻のページへのリンク