ロードハウナナフシとは? わかりやすく解説

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ロードハウナナフシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/23 13:54 UTC 版)

ロードハウナナフシ
Dryococelus australis
保全状況評価[1]
CRITICALLY ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ナナフシ目 Phasmatodea
: ナナフシ科 Phasmatidae
: Dryococelus
: D. australis
学名
Dryococelus australis
(Montrouzier, 1885)
シノニム

Karabidion australe Montrouzier, 1855

ロードハウナナフシ[2] (Dryococelus australis) は、ナナフシ目ナナフシ科Dryococelus属に分類される昆虫。本種のみでDryococelus属を構成する。

1925年に一旦絶滅したとされるも、2001年に再発見された昆虫である。「最も希少な昆虫」とされている。

分布

オーストラリア本土の東約600kmの海上に位置する突岩状の孤島 ボールズ・ピラミッドに生息。近傍の有人島 ロード・ハウ島では絶滅した。#歴史と保護節を参照。

形態と行動

成体の大きさは雌で体長15cm、体重25g、雄はより小さい。この大きさのために時としてland lobster(陸のザリガニ)やwalking sausage(歩くソーセージ)などと呼ばれる。体は細長く、頑強な脚を持つ。雄には奇妙な刻み目がある。ナナフシ類には基本的にはがあるが、この種は翅を持たない。

このナナフシの行動は、昆虫としては特に変わっている。雄と雌はある種のつがい状態を形成する。雄は雌の後について、雌の動きに合わせて運動する。つがいは夜間には雄が三対の足で雌を包むようにして休息する。

雌は低木の枝からぶら下がって産卵する。孵化には9か月を要し、孵化した幼生は初めは明るい緑色で昼間に活動するが、成熟すると黒くなって夜行性となる。なお、成虫は死んで時間が経つと、茶色に変色する。

分類

ボールズ・ピラミッドで発見されたナナフシ類(下記参照)は、ロードハウ島にかつて生息していた本種よりも小型、後脚大腿部の棘が小さい、樹上棲ではない等の比較的大きな差異も見られた[3]が、2017年に発表されたロード・ハウ島産の本種の標本との飼育個体の核DNAとミトコンドリアDNAの分子系統解析では、詳細な解析結果を得るために両者の標本がより必要としながらもミトコンドリアDNAの遺伝的差異が1 %未満で種内変異の範疇に収まるという解析結果を得ている[3]。この解析からボールズ・ピラミッド産個体群はロード・ハウ島産と長期間隔離されていたわけではなく、比較的近年にボールズ・ピラミッドに到着したことが示唆されている[3]

歴史と保護

Lord Howe Island stick insect Dryococelus australis

かつてはロード・ハウ島では普通種であり、釣り餌として使われたこともあるが、最後の個体が確認されたのは、補給船Makambo号により島にクマネズミが持ち込まれてから2年後の1920年で、以降本種は絶滅したと考えられていた。

1960年代、ロード・ハウ島から約20キロメートル離れたボールズ・ピラミッドを訪れたロッククライマーが、ロードハウナナフシの死骸を発見した[3]。その後、数年にわたり、数個体の死骸が発見されたが、生きた個体は発見できなかった。

2001年、昆虫学者と自然保護団体からなる調査隊がこの島の動物相植物相を調べるために上陸した。そして驚いたことにこのナナフシの個体群を再発見したのである[3]。それは一本のMelaleucaフトモモ科ティートリーの仲間)の低木の下で、個体数は極めて少なく20-30個体だけだった。

2003年、ニューサウスウェールズ自然公園と野生動物局の調査隊がボールズ・ピラミッドを再び訪れ、二組の交配中の番いを採集し、一組はシドニーの個人的な飼育者に渡され、もう一組はメルボルン動物園へ持ち込まれた。最初は困難もあったが、無事に飼育下での繁殖は成功した。最終的な目的は、この種をロードハウ島へ再導入するのに十分なだけの個体数の確保である。2006年現在では、飼育下の個体群は50程の個体と、孵化を待っている1000程の卵からなっている。

2017年、沖縄科学技術大学院大学らの研究グループが、ロード・ハウ島で絶滅したとされていたロードハウナナフシが、現在も20匹のロードハウナナフシからなる個体群として実際にボールズ・ピラミッドに生息していることを確認し報告した[4]

出典

[脚注の使い方]
  1. ^ Rudolf, E. & Brock, P. (2017). Dryococelus australis. The IUCN Red List of Threatened Species 2017: e.T6852A21426226. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2017-3.RLTS.T6852A21426226.en. Downloaded on 20 June 2021.
  2. ^ IUCN (国際自然保護連合) 編 編、岩槻邦男・太田英利 訳 『世界の絶滅危惧生物図鑑』丸善出版、2014年、359頁。ISBN 978-4-621-08764-0 (原書: Species on the Edge of Survival, HarperCollins Publishers, 2011; 原典: Species of the Day: Lord Howe Island Stick Insect
  3. ^ a b c d e Alexander S. Mikheyev, Andreas Zwick, Michael J.L. Magrath, Miguel L. Grau, Lijun Qiu, You Ning Su, David Yeates, Museum Genomics Confirms that the Lord Howe Island Stick Insect Survived Extinction, Current Biology, 27, 2017, Pages 1-5.
  4. ^ 幻の昆虫「ロードハウナナフシ」は生きていた沖縄科学技術大学院大学、2018年9月15日閲覧。

外部リンク


ロードハウナナフシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/06 06:19 UTC 版)

ボールズ・ピラミッド」の記事における「ロードハウナナフシ」の解説

ボールズ・ピラミッドは、ロードハウナナフシ(Dryococelus australis)の野生個体群存在する現時点唯一の場所である。 ロードハウナナフシはロード・ハウ島1920年最後に見られなくなった後、絶滅した考えられていた。しかし1964年ボールズ・ピラミッド登攀時に、この種が継続的に生息していたことが発見され、一体の死体写真撮られた。その後何年にもわたり何体も死体見つかったが、生きた個体探しても見つからなかった。2001年昆虫学者たちと自然保護団体の者たちが、植物相と動物相分布調べるためボールズ・ピラミッド上陸した。そして期待通り海抜100メートル地点で、Melaleuca howeana茂みの下にロードハウナナフシの群れ生息しているのを発見した。この群れ極めて小規模で、24匹しかいなかった。2対のつがいがオーストラリア本土持ち帰られ新し個体繁殖成功した最終的にはこれらをロード・ハウ島に戻すことが計画されている。

※この「ロードハウナナフシ」の解説は、「ボールズ・ピラミッド」の解説の一部です。
「ロードハウナナフシ」を含む「ボールズ・ピラミッド」の記事については、「ボールズ・ピラミッド」の概要を参照ください。

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