リプログラミングとクローン個体作成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 15:50 UTC 版)
「エピジェネティクス」の記事における「リプログラミングとクローン個体作成」の解説
多細胞生物の細胞は、エピジェネティックな状態の継承によって特異的な機能を維持しているが、別種類の細胞となる分化能が制限されることがある。細胞(細胞核)が、それまでに継承・蓄積してきたエピジェネティックな標識を消去・再構成し、分化能を取り戻すことをリプログラミング(再プログラム化・初期化)と呼ぶ。 両生類においては、1950年代には胚細胞の核を、1960年代には体細胞の核を除核卵に移植して発生させクローン個体を得ることができていた。これらでは移植により細胞核がリプログラムされることを示している。一方、哺乳類でも核移植クローンの作成が試みられたが、1980年代に行われた生殖細胞の核の移植では発生が停止し、雄ゲノムまたは雌ゲノム単独では発生が不可能であることが示唆されるに至った。このことが哺乳類におけるゲノムインプリンティング機構の発見につながった。 1997年には体細胞核移植によるクローン羊ドリーの誕生が報告され、その後は他の哺乳類でも体細胞クローン個体作成が相次いだ。しかしながら、体細胞クローンは個体作成効率も数パーセント以下と低く、誕生したクローン個体に異常が観察されることが問題視されている。また、胚性幹細胞(ES細胞)由来のESクローンにおいても表現型異常が観察されている。このようなクローン個体の表現型異常の多くは、有性生殖によって後代に伝えられない、つまり生殖細胞でのリプログラミングが起きることから、主にエピジェネティックな要因によるものと考えられている。体細胞クローンではインプリンティング部分以外のリプログラミング不全が個体異常を起こしており、ESクローンの場合はゲノムインプリンティングの不具合により個体の異常が起きるものと考えられている。
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