ヨーロッパのニハイチュウ相
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/24 15:33 UTC 版)
「二胚動物」の記事における「ヨーロッパのニハイチュウ相」の解説
ヨーロッパ沿岸の海域の多くの種の頭足類が寄生されていることが調べられている。現在まで16種のニハイチュウ類が17種の頭足類から記載され、1つの頭足類から1-4種のニハイチュウ類が記録されている。ほとんどのニハイチュウは宿主特異性を持っているが、18種のニハイチュウは比較的広い範囲の宿主を持つことが知られている。ヨーロッパのニハイチュウにおいて、例えばDicyema macrocephalum van Beneden, 1876は3属5種にわたる頭足類で現れている。広い範囲の宿主をもつ他の種では滴虫型幼生の特徴を使うことなく記載されているものが多く、そのため本当に複数の種に亘って寄生しているか確かめるためこれらの種の滴虫型幼生の細胞配置を調べる必要がある。 ヨーロッパ産のマダコOctopus vulgaris Cuvier, 1797はヨーロッパの頭足類の中で商業的に最も重要であるため、寄生虫についてよく調べられている。4種の二胚動物、Conocyema polymorpha van Beneden, 1882、Dicyema paradoxum von Kölliker, 1849、Dicyema typus van Beneden, 1876 そして Dicyemennea lameerei Nouvel, 1932 が地中海、イギリス海峡そして北東大西洋に棲息するO. vulgarisから記載されている。典型的に、2-3種のニハイチュウが宿主の種や個体に存在しているが、上記の4種は1個体のタコに同時に存在することはない。DicyemaとDicyemenneaは普通に見られ、これらの属に最も多くの種が置かれている。他の属は1属1種か数種を含むのみである。Conocyema polymorphaは不定形で外部の繊毛を欠く珍しいニハイチュウである。本種は12個の体皮細胞からなる比較的小さな種で、蠕虫型幼生は楔形で、4つの前極細胞からなる1層の特徴的な極帽をもつ。また本種では前極細胞の後方に4つの側極細胞が後極細胞の代わりに配置している。 ヨーロッパコウイカ Sepia officinalis もまたヨーロッパ諸国で商業上重要な種で、イギリス海峡および地中海に分布している。本種からもDicyemennea gracile (Wagener, 1857)、Pseudicyema truncatum (Whitman, 1883)、Dicyema whitmani Furuya & Hochberg, 1999そしてMicrocyema vespa van Beneden, 1882 という4種のニハイチュウが記載されている。M. vespa は合胞体からなり極帽が不定形の変わった種である。極帽である領域は幼生期でしか識別できない。Pseudicyema truncatum は80%近くの寄生率をもつ最も普通種である。それに対し、Dicyema whitmani はイタリアのナポリで獲られた1個体のヨーロッパコウイカからしか見つかっていない非常に稀な種である。 アメリカ合衆国および日本のニハイチュウ相はヨーロッパのニハイチュウ相と同様によく調べられている。沿岸域にコウイカ類の生息しないアメリカの頭足類相に比べ、ヨーロッパの頭足類相は日本のものとよく似ている。生態学的観点からは、ヨーロッパのマダコ O. vulgaris とヨーロッパコウイカ S. officinalis はそれぞれ、日本におけるマダコ O. sinensis とコウイカ S. esculenta とよく似ている。実際、2016年まで O. sinensis は O. vulgaris と同種と考えられていた。コウイカ S. esculenta は日本のコウイカ類において最も普通種である。しかし、Microcyema に属する種はこれらの宿主や他の日本の頭足類からは見つかっていない。このような様々な属の存在はヨーロッパのニハイチュウ相を特徴づけている。
※この「ヨーロッパのニハイチュウ相」の解説は、「二胚動物」の解説の一部です。
「ヨーロッパのニハイチュウ相」を含む「二胚動物」の記事については、「二胚動物」の概要を参照ください。
- ヨーロッパのニハイチュウ相のページへのリンク