メルセデス・ベンツ L4500
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メルセデス・ベンツ L4500 S
ジンスハイム自動車・技術博物館 |
|
基礎データ | |
---|---|
全長 | 7,860 m |
全幅 | 2.350 m |
全高 | 3.345 m |
重量 | 10.4 t |
乗員数 | 2名 |
装甲・武装 | |
装甲 | なし |
主武装 | なし |
機動力 | |
速度 | 66 km/h |
エンジン | メルセデス・ベンツOM67/4 水冷直列6気筒ディーゼルエンジン 7.3 L 112 hp(82KW) |
懸架・駆動 | 全輪駆動、または後輪駆動 |
行動距離 | 約500 Km |
メルセデス・ベンツ L4500(Mercedes-Benz L4500)は、1939年から生産された水冷直列6気筒ディーゼルエンジンを搭載したダイムラー・ベンツAGのペイロード4.5トントラック。2つの駆動方式(A:全輪駆動、S:後輪駆動)が1945年まで製造された。L4500 Aは1941年から1944年まで[1]、L4500 Sはダイムラー・ベンツで1944年まで[1]、オーストリアの ザウラーで1944年から1945年まで[2]合計11,150台以上が製造された[1][注釈 1]。
概要
1939年に策定されたドイツ国防軍のシェル・プランは戦争経済のための戦略的な準備であり、その目的は軍の車両群の保守と修理を簡素化することと、自動車とトラックの種類を大幅に削減し、それらのコンポーネントの標準化を通じて生産を効率化することだった。 1940年1月1日に発効したこの計画によりトラックの車種数が114車種から19車種に統合されたが[3]、ダイムラー・ベンツは下表の様に、3トン、4.5トン、6.5トンの生産を担当した[注釈 2]
1.5トントラック | 3トントラック | 4.5トントラック | 6.5トントラック |
---|---|---|---|
オペル | オペル | ダイムラー・ベンツ | ダイムラー・ベンツ |
フェノーメン | ドイツ・フォード | ビュッシング-NAG | MAN |
シュタイアー | ボルクヴァルト | ザウラー | クルップ |
- | ダイムラー・ベンツ | ヘンシェル | フォマーク |
- | マギルス(KHD) | マギルス(KHD) | - |
- | MAN | MAN | - |
既存の民生用トラックをベースに製作された簡易ハーフトラック・マウルティア(Sd.Kfz.3)が、戦争中盤以降多用されるようになった。1942年、3トントラックを製造するオペル、ドイツ・フォード、マギルス(KHD)の各社に発注が出たが、ダイムラー・ベンツには3トントラックでの発注はなく4.5トントラックのL4500(Sd.Kfz.3/5)に対してであった。
生産
ダイムラー・ベンツの工場で1939年から1944年まで、それ以降は1944年から1945年までウィーンのザウラーでライセンス生産された。
材料不足のため、1943年以降、湾曲したフェンダーはよりシンプルな形状のものに置き換えられ、主に木材とプレスされた段ボールで構成された標準キャブが使用された。
生産終了までにL4500 Sが約6,400台、L4500 Aが約2,950台(ザウラーの生産分含む)、バスボディが架装されたタイプが300台、マウルティアが約1,500台の合計約11,150台以上が生産された[1][2]。
技術仕様
L 4500は、ラダーフレームを備えた2軸トラックで、前後2軸ともリーフスプリングで懸架されており、フロントアクスルにはシングルタイヤ、リアアクスルにはダブルタイヤが装着した。タイヤサイズは10.5-20が装備された。
フットブレーキはエアアシスト付き油圧ブレーキで全ての車輪に作用し、パーキングブレーキは後輪のみ作用した。
エンジンは排気量7,274ccのメルセデス・ベンツOM67/4 水冷OHV直列6気筒予燃焼室付きディーゼルエンジンで、燃料は噴射ポンプによって予燃焼室に噴射された。クランクシャフトには7つのベアリングで保持され、ヘリカルギヤを介してカムシャフトを駆動した。
エンジンからは、シングルディスク乾式クラッチを介して、副変速機付き5速マニュアルトランスミッションに動力が伝達された。L 4500 Aでは、動力はトランスミッションからデフを介して前後輪に伝達され、副変速機とも前輪駆動はオフにすることもできた。
派生型
- フラットベッドボディ(L4500 SおよびA)[1]
- バスボディ[1]
- KS25消防車,1941年式(L4500 Sへマギルスの消防設備を架装)[4]
- TLF25水槽ポンプ車(L4500 Aへマギルスの消防設備を架装)[4]
- 2cm Flakvierling38 対空機関砲を搭載した装甲キャブ架装自走砲型(L 4500 A)[5]
- 3.7cm Flak 37 対空機関砲を搭載した装甲キャブ架装自走砲型(L 4500 A)[5]
- 5 cm FlaK 41 対空機関砲を搭載した装甲キャブ架装自走砲型(L 4500 A)[5]
- Sd kfz 3/5 マウルティア
-
消防車仕様
-
装甲キャブを架装した3.7cm Flak 37対空機関砲搭載型
-
Sd kfz 3/5 マウルティア
注釈
- ^ バスボディが架装された300台、マウルティアの約1,500台を含む。
- ^ ペイロード1.5トンのメルセデス・ベンツ L1500の生産開始は1941年から。
出典
- ^ a b c d e f “Daimler-Benz AG” (英語). Kfz.der Wehrmacht. 2025年5月5日閲覧。
- ^ a b “Österreichische Saurerwerke AG” (英語). Kfz.der Wehrmacht. 2025年5月5日閲覧。
- ^ a b “The Schell-Plan” (英語). Kfz.der Wehrmacht. 2025年5月5日閲覧。
- ^ a b Werner Oswald: Deutsche Militärlastwagen bis 1945, *Motorbuchverlag, Stuttgart 2019, PP213–215
- ^ a b c “Schwere Geländegängiger Lastkraftwagen 4.5t Mercedes-Benz L4500A als Flakwagen” (英語). The Online Tank Museum. 2025年5月5日閲覧。
参考文献
翻訳元ドイツ語版の参考文献
- Reinhard Frank: Mercedes im Kriege – Personenwagen, Lastkraftwagen, Sonderaufbauten. Podzun-Pallas-Verlag, Dorheim. 1985. ISBN 3-7909-0244-6.
- Pat Ware: The Illustrated Guide to Military Vehicles: A complete reference guide to over 100 years of military vehicles. Anness Publishing – Hermes House. London. 2010. S. 143. ISBN 978-1-84681-585-0.
- Jean-Denis G.G. Lepage: German Military Vehicles of World War II: An Illustrated Guide to Cars, Trucks, Half-Tracks, Motorcycles, Amphibious Vehicles and Others. McFarland, 2007. ISBN 978-0-7864-6252-0. S. 107; S. 111 ff.
- Werner Oswald: Kraftfahrzeuge der Reichswehr, Wehrmacht und Bundeswehr, Motorbuchverlag, Stuttgart 1970, S. 125
- Werner Oswald: Deutsche Militärlastwagen bis 1945, Motorbuchverlag, Stuttgart 2019, ISBN 978-3-613-04216-2, S. 213–215
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