メキシカン・ハット(ワイン・ボトル)型ポテンシャル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 15:19 UTC 版)
「自発的対称性の破れ」の記事における「メキシカン・ハット(ワイン・ボトル)型ポテンシャル」の解説
(*)式で μ = − 10 , λ = 1 {\displaystyle \mu =-10,\lambda =1} とした場合の自発的対称性の破れの図( θ {\displaystyle \theta } は谷の円周方向である) 理論物理学では場の対称性は全て作用(もしくはラグランジアン、ハミルトニアン)に含まれるとされる。特にラグランジアンのポテンシャル(相互作用)項は系の状態を如実に表す。自発的対称性の破れを起こすような模型のラグランジアンで最も簡単なものの1つは「メキシカン・ハット(ワイン・ボトル)型ポテンシャル」と呼ばれるものである。 いま複素スカラー場 ϕ = ϕ 0 e i θ {\displaystyle \phi =\phi _{0}\,e^{i\theta }} が次のような運動項、ポテンシャル項 V(φ) をもつ系を考える。 L = ∂ μ ϕ ∗ ∂ μ ϕ − V ( ϕ ) , {\displaystyle L=\partial ^{\mu }\phi ^{*}\,\partial _{\mu }\phi -V(\phi )\ ,} V ( ϕ ) = μ | ϕ | 2 + λ | ϕ | 4 ⋯ ( ∗ ) {\displaystyle V(\phi )=\mu |\phi |^{2}+\lambda |\phi |^{4}\quad \cdots (*)} このとき μ、λ は任意の定数であり、θ の値を任意に変化させてもラグランジアン L は不変である(対称性がある)。スカラー場の基底状態(真空)はポテンシャルの安定点で決まるが、μ,λ>0 であるような場合の安定点は φ=0 ( ϕ 0 = 0 {\displaystyle \phi _{0}=0} )のみであり、ラグランジアンも真空も θ の値によらず対称性は破れない。 一方 μ<0,λ>0 の場合 ϕ = − μ 2 λ e i θ {\displaystyle \phi ={\sqrt {-{\frac {\mu }{2\lambda }}}}\ e^{i\theta }} がより安定な基底状態(真空)となる。 このときラグランジアンには(図のポテンシャルの底の円周方向の回転に対応した) θ を 0 から 2π の間で動かすU(1)(回転)対称性が残っている。しかし系の真空にはある θ の値をもったポテンシャルの谷の一点が無作為に自然と選ばれるため、その点の周りでのU(1)(回転)対称性は壊れてしまっている。この現象を自発的対称性の破れと呼ぶ。 素粒子物理学のワインバーグ=サラム理論では、同様のポテンシャル(ただし、複素スカラー場は2つ)を考えることにより、ゲージ対称性 S U ( 2 ) L × U ( 1 ) Y {\displaystyle SU(2)_{L}\times U(1)_{Y}} を U ( 1 ) e m {\displaystyle U(1)_{em}} に破り、ラグランジアンでは質量ゼロであったウィークボソンに質量を与えている。
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