マルエツ・ハローマート事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 14:26 UTC 版)
「マルエツ」の記事における「マルエツ・ハローマート事件」の解説
1981年(昭和56年)、千葉県松戸市上本郷でハローマートが運営する「ハローエース上本郷店」は、新装開店セールにおいて集客効果の高い牛乳(1リットル入り紙パック、以下単に「牛乳」)を通常価格の178円から160円に値下げして販売した。近隣に所在する「マルエツ上本郷店」はこれに対抗し、通常価格178円の牛乳を156円で販売し、これによりマルエツ・ハローマートの両店による牛乳安売り競争が始まり、互いに利益を度外視して対抗的に値下げを繰り返した。その結果、両店では約3か月間にわたり牛乳1本100円(本数制限なしで2本目からは150円)で安売りされるに至った。なお、牛乳1本あたりの仕入れ価格はマルエツ上本郷店が155 - 158円、ハローエース上本郷店が157 - 160円であった。また当時の同地区での牛乳専売店での同等品の販売価格は190円から210円、仕入れ価格は185円であった。 公正取引委員会はマルエツとハローマートの牛乳値下げ競争を問題視し、「マルエツおよびハローマートのような、多種類の商品を取り扱う有力な小売業者がこのような廉売を行うことは、商圏内の牛乳専売店等を競争上きわめて不利な状況に置くものであり、事業活動を困難にするおそれがある」とし、独占禁止法で禁じられている不当廉売に当たるとして同法の規定に基づき審査を開始。これを受け、マルエツは同年11月4日から、ハローマートは同年11月6日から、それぞれ牛乳の安売りを中止した。 独占禁止法が禁じるところの不当廉売とは、「正当な理由なく、商品または役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、その他不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること」(一般指定6項)である。公正取引委員会は「マルエツ及びハローマートは、不当に低い対価をもって牛乳を供給したものであり、これは不公正な取引方法の旧一般指定5項(現6項)に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである」と審決した(公正取引委員会、昭和57年(勧)第四号および第五号、昭和57年5月28日勧告審決)。公正取引委員会はマルエツおよびハローマートに排除措置命令を出し「マルエツ(ハローマート)は、上本郷店が牛乳をその仕入価格を著しく下回る価格で販売していたがこの行為をやめたこと、今後、右行為と同様な行為を行わないことを、上本郷店の商圏内において牛乳を販売する事業者及び同商圏内に所在する一般消費者に周知徹底させなければならない」とした。 マルエツがこうした行為に及んだ背景として、同社本部は同年より競合店の存在により売上が特に低下した店舗を「政策変更店舗」に指定し、生鮮食料品を中心に値下げを行うことで集客と売上増を狙うこととしたが、それらの店舗にはマルエツ上本郷店も含まれていた。そのためハローエース上本郷店のリニューアルと新装セールにより顧客が流出することを危惧し、牛乳の廉売を行い値下げ競争を引き起こしたものである。 この事件は「マルエツ・ハローマート事件」と呼ばれ、小売業における食料品の不当廉売に対し法的措置の取られた事例として、重要な判例とされている。
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