ポリアーキーと体制分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 02:13 UTC 版)
「ポリアーキー」の記事における「ポリアーキーと体制分類」の解説
ダールは政治体制一般を二つの次元で分類することをまず考えた。そのために自由化もしくは公的異議申し立てと、包括性或いは参加という二つの次元を設けた。この二つの次元のそれぞれをどの程度満たすかにより、政治体制は分類されるわけである。ちなみにこの二つの次元はそれぞれ独立した変数であることに注意が必要である。一方が高く他方が低いということは十分にありうる。 自由化もしくは公的異議申し立てとはいわゆる自由権、すなわち集会・結社・言論の自由がどの程度認められているかという点と政府への自由な批判がどの程度許されているかという点で決定される次元である。より具体的には反政府勢力が自由な活動を許されており、場合によっては政府と反政府勢力によって政権をめぐる政治的な競争が行われることが重要である。 包括性或いは参加とはその政治体制内(多くの場合或る一国内)にいる人間がどの程度政治に参加できるかによって決定される次元である。すなわち、政治に参加が許されている人々の割合・比率に関する次元と言える。典型的には選挙権を持っている人の割合が議論の対象となる。 この二つの次元をどの程度満たすかによって政治体制は次の4つに分類される。ポリアーキー、競争的寡頭体制、包括的抑圧体制、閉鎖的抑圧体制がそれらの分類である。 ポリアーキーは二つの次元の双方を十分な程度に満たす政治体制である。具体的には日本やアメリカ、イギリスもしくはヨーロッパ諸国に見られる体制を指す。ポリアーキーと認められる程には二つの次元を満たしていないが一定程度満たす体制、すなわちポリアーキーに準ずる体制を準ポリアーキーと呼ぶ。ポリアーキーが一定程度満たすべき条件としてはさらに次のものが挙げられる。 選挙によって選出された公務員(政治家) 自由で公正な選挙の定期的な実施 表現の自由 多様な情報源 集団の自治・自立すなわち政党や利益集団などを自由に形成できること 全市民の包括的参加 競争的寡頭体制は二つの次元のうち自由化(公的異議申し立て)の次元を十分な程度に満たすが、包括性の次元を満たさない政治体制を指す。競争的寡頭体制においては、複数の、寡頭制的エリートからなる政治集団(例えば政党)が政権を巡って競争する。そのため政権交代の可能性がある。19世紀初頭までのイギリスでは、トーリーとホイッグの二大政党による政権を巡る競争が展開された。しかし選挙権が一般大衆にまで拡張されず、参加の次元が十分に高いとは言えなかった。 包括的抑圧体制は二つの次元のうち包括性の次元を十分に満たすが、自由化(公的異議申し立て)の次元を満たさない政治体制を指す。選挙権は与えられているが、自由権が保障されず反政府的な行動が抑圧されているような体制である。例えば全体主義体制の国にあっては、大衆を政治に動員し参加させることが重要視される場合があった。そのような体制は包括的抑圧体制に分類される。 閉鎖的抑圧体制においては、二つの次元の双方が満たされていない。このような体制の具体例は現代ではあまり見られない。しかし選挙権はあっても形式上のものであり実質的には独裁者の政権維持を追認するしかない場合、このような体制を包括的抑圧体制と呼ぶのか閉鎖的抑圧体制と呼ぶのかは議論の余地があるだろう。
※この「ポリアーキーと体制分類」の解説は、「ポリアーキー」の解説の一部です。
「ポリアーキーと体制分類」を含む「ポリアーキー」の記事については、「ポリアーキー」の概要を参照ください。
- ポリアーキーと体制分類のページへのリンク