ホルモン制御
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/08 08:22 UTC 版)
精子形成のホルモン制御は、種によって異なる。ヒトでのメカニズムは完全には理解されていない。しかし精子形成の開始が、視床下部、下垂体とライディッヒ細胞との相互作用で思春期に起こることが知られている。下垂体が除去されている場合、卵胞刺激ホルモン(FSH)およびテストステロンによって精子形成を開始させることができる。FSHとは対照的に、黄体形成ホルモン(LH)は生殖腺のテストステロン産生を誘導する以外には精子形成に役割を果たさない。 FSHはセルトリ細胞によるアンドロゲン結合タンパク質(ABP)の産生、および血液精巣関門の形成の両方を刺激する。ABPは、テストステロンを精子形成の維持に十分な高いレベルに濃縮するために不可欠である。精巣内のテストステロン濃度は、健康な男性の間で5–10倍の幅があるものの、血液中に見られる濃度よりも20–100または50–200倍高い。FSHは精巣内にテストステロンをとらえて濃縮させることができるが、いったん発生が開始されると精子形成の維持にはテストステロンのみが必要となる。しかし、FSHが増加するとタイプA精原細胞のアポトーシスを防止することにより、精子の産生を増加させる。インヒビンはFSHのレベルを減少させるように作用する。げっ歯類のモデル生物からの研究により、性腺刺激ホルモン(LHおよびFSHの両方)は、アポトーシスを促進するシグナルを抑制することにより、精子形成過程をサポートし、精子形成細胞の生存を促進することが示唆されている。 セルトリ細胞自体はホルモン産生を介して精子形成の一部を媒介する。セルトリ細胞は、エストラジオールおよびインヒビンを産生することができる。ライディッヒ細胞は主にテストステロンを産生し、エストラジオールも産生することができる。エストロゲンは、動物における精子形成に必須であることが判明している。エストロゲン非感受性症候群(ERαが欠損)の男性は、精子数は正常であるが精子の生存能力は異常に低いことが報告されている(不妊かどうかは不明)。エストロゲンの異常な高値は、性腺刺激ホルモン分泌の抑制および精巣内のテストステロン産生過剰の原因になり、精子形成に有害である可能性がある。また、プロラクチンは精子形成に重要なようである。
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