ブラインド・チーズ
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/20 19:24 UTC 版)

ブラインド・チーズ(英語: brined cheese、white-brined、ホワイト・ブラインド[1])、または種類によっては時としてピクルド・チーズ(英語: pickled cheese)は、食塩水(ブライン)に漬けて加塩および熟成させたチーズのことである。現代に世界中で食されている多くのチーズの祖先であるかもしれないと考えられている[1][2]。
概要

ブラインド・チーズは、密閉または半透過性容器の中で10から18パーセントの食塩水(ブライン)に浸して加塩および熟成させたチーズのことで、この工程によりチーズは良い安定性を保ち、温暖な気候でも細菌の繁殖を抑制することができる[1][2]。また、多くの場合において伝統的製法のものは冷蔵保存を必要としなかった[1]。また、水の代わりにホエイに塩を加えた溶液に浸したものもある[1]。
ブラインド・チーズはソフトなものからハードなものがあり、使用する乳の種類によって水分含有量や色、風味が異なる。ただし、ほとんど全てがリンドレス(表皮無し)で、一般的に若い状態ではすっきりとした塩辛さと酸味があり、熟成するとピリッとした辛味が出る。ほとんどがホワイト・チーズ[注 1]である[2]。
食塩水はその他のチーズ、特にウォッシュド・リンド・チーズの製造にも使用されるが、このブラインド・チーズという用語は、食塩水に浸した状態で熟成させるチーズのみに使用される。
歴史と地域
ブラインド・チーズの起源は現代では中東および地中海沿岸と呼ばれる地帯で、約8,000年から9,000前に作られたのが始まりだと考えられている。もともとは家庭内や小さな職人工房で手作りされていた。現代ではフェタのように大量に工場生産されているものや、少量で生産され地元のみで消費されているものもあり、世界で1,000種以上のブラインド・チーズが存在する[1]。生産は、地中海に接するか、東ヨーロッパ及びバルカン半島に位置する15カ国以上で行われている[1]。
原料
ブラインド・チーズは伝統的に羊乳、山羊乳、そして水乳牛から作られる。これらの乳を生産する羊、山羊、水牛たちは、牛と違ってβカロチンを体内で無色のビタミンAに変換することから、その乳から作られるチーズは白いのが特徴である[1][3]。よってブラインド・チーズがホワイト・チーズと呼ばれるゆえんである。現代では牛乳や、食感が変わるものの限外濾過牛乳も用いられる[1]。
日本語での呼称
日本語では、過去分詞の前置修飾をカナ表記する際に、現在形(原形)が使用されedが欠落することがあり(例:iced coffeeをアイスト・コーヒーではなくアイス・コーヒーと表記)、ブライン・チーズという表記のほか、ホワイト・チーズであることからホワイト・ブラインド・チーズ、ホワイトブラインチーズ、白ブラインチーズ、白塩水チーズなどの機械翻訳の表記がみられる[4][5]。
一覧
ブラインド・チーズは、中東および地中海地域で広く製造され、食べられている[6]。

ブラインド・チーズは以下のものを含む:
- アッカウィ (レバント)[1]
- アリーシュ (エジプト)
- バルカンスキー・スィール (チェコおよびスロバキア)
- ブリンザ (ルーマニア、セルビア、スロバキア、ウクライナ、ロシア)[1]
- チェチル (アルメニア)
- ツェリン・ビット (ブルガリア)
- ドミアティ (エジプト)[1]
- フェタ (ギリシャ)[1]
- ジュベイナ (マルタ)
- ハルーミ (キプロス)[1]
- ハルーミ (エジプト)
- リグヴァン (イラン)[1]
- メッシュ (エジプト)[7] - 現代でも食されている発酵も行う白くない古代チーズ
- Mujaddal (シリア)[1]
- ナーブルシ (パレスチナ)
- シレネ (ブルガリア)[1]
- スルグニ (ジョージア)
- テレメア (ルーマニア、ギリシャ)[1]
- ベヤズ・ペイニル (トルコ)[1][8]
- ツファット (イスラエル)
関連項目
- チーズの一覧
- ピクリング- 塩水または酢入り溶液に食品を漬けること
- チーズの種類
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s “Brined Cheese - an overview | ScienceDirect Topics”. www.sciencedirect.com. 2025年3月12日閲覧。
- ^ a b c A. Y. Tamime (2008年04月15日). Brined cheeses. Wiley-Blackwell, 2006. p. 2. ISBN 9781405171649 2011年3月21日閲覧。
- ^ Arumugam, Nadia (2012年7月26日). “Food Explainer: Why Is Cheese Yellow When Milk Is White?” (英語). Slate. ISSN 1091-2339 2025年3月12日閲覧。
- ^ Zuzana, Lazarkova、Tomas, Sopik、Jaroslav, Talar、Khatantuul, Purevdorj、Nikolaos, Salek Richardos、Leona, Bunkova、Michaela, Cernikova、Martin, Novotny ほか「貯蔵温度と時間により影響される缶に貯蔵した白塩水チーズの品質評価【JST・京大機械翻訳】」『International Dairy Journal』第121巻、2021年、 ISSN 0958-6946。
- ^ A, Bosakova-Ardenska、H, Andreeva、A, Danev、P, Panayotov、P, Boyanova「HSI色空間における画像解析によるブルガリア白塩水チーズ評価のカット表面【JST・京大機械翻訳】」『IOP Conference Series: Materials Science and Engineering』第1031巻第1号、2021年、9頁、 ISSN 1757-8981。
- ^ A. Y. Tamime (1991-01-15). Feta and Related Cheeses. Woodhead Publishing, 1991. p. 9. ISBN 9781855732780 2011年3月21日閲覧。
- ^ Hayaloglu, Ali A.; Ozer, Barbaros H.; Fox, Patrick F. (2008-03). “Cheeses of Turkey: 2. Varieties ripened under brine”. Dairy Science and Technology 88 (2): 225–244. doi:10.1051/dst:2007014. ISSN 1958-5586 .
- ^ “Influence of salt concentration on the characteristics of Beyaz cheese, a Turkish white-brined cheese”. Le Lait 82 (4): 372–372. (2002-07). doi:10.1051/lait:2002101. ISSN 0023-7302 .
参考文献
- Tamime, A.Y. (2008). Brined Cheeses. John Wiley & Sons. ISBN 978-1405171649
- Dariani, Davood Nadjarian (1979). A Chemical, Sensory and Consumer Evaluation of Soft Pickled Cheese Manufactured from Cow and Goat Milk. University of Georgia
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