ファエトン_(小惑星)とは? わかりやすく解説

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ファエトン (小惑星)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/27 20:58 UTC 版)

ファエトン
3200 Phaethon
アレシボ天文台が2017年に撮影したファエトン
仮符号・別名 1983 TB
分類 地球近傍小惑星
PHA
小惑星
軌道の種類 アポロ型
水星横断
金星横断
火星横断
発見
発見日 1983年10月11日
発見者 S. グリーン
J. K. デービス
発見方法 IRAS
軌道要素と性質
元期:2012年9月30日 (JD 2,456,200.5)
軌道長半径 (a) 1.271 au
近日点距離 (q) 0.140 au
遠日点距離 (Q) 2.403 au
離心率 (e) 0.890
公転周期 (P) 1.43 年
軌道傾斜角 (i) 22.23
近日点引数 (ω) 322.13 度
昇交点黄経 (Ω) 265.28 度
平均近点角 (M) 103.63 度
物理的性質
直径 5.8 km[1]
質量 1.4 ×1014 kg
平均密度 2.0? g/cm3
表面重力 0.0014 m/s2
脱出速度 0.0027 km/s
自転周期 3.604 時間
スペクトル分類 B / F
絶対等級 (H) 14.51
アルベド(反射能) 0.1066
表面温度
最低 平均 最高
~247 K 1,025 K
Template (ノート 解説) ■Project
ファエトンの軌道。近日点が水星の内側に入り込んでいるのがわかる

ファエトン[2] (3200 Phaethon) は、太陽系地球近傍小惑星で、アポロ型に属する。フェートンとも呼ばれる。

イギリスアメリカオランダの共同科学プロジェクトの赤外線天文衛星 (IRAS) の画像を調査していたイギリスのサイモン・グリーン、ジョン・K・デイヴィースが、1983年10月11日に小天体を発見した。10月14日に国際天文学連合回報 (IAUC) 3878号でこの天体は仮符号 1983 TB として発見が公表され、チャールズ・コワルが、この天体は恒星状である(彗星ではない)と報告した。その後間もなく刊行されたIAUC3881号では、フレッド・ホイップルが、1983 TB の軌道要素と、写真測定されたふたご座流星群の軌道要素が一致すると報告した。こうして、1983 TB はふたご座流星群の母天体だと判明した。

その後、1983 TB は当時知られていた地球近傍小惑星の中では最も太陽に接近する(0.140天文単位水星の近日点の58%)天体であることが判明し、ギリシア神話に登場する太陽神ヘーリオスの息子パエトーン(ラテン語ではファエトン)にちなみファエトンと命名された。ファエトンは、太陽への接近時には表面温度が最大で1,025 Kに達する。なお、現在では更に太陽に近付く小惑星も発見されている。

21世紀初頭時点の調査では、ファエトンからはコマダストテイルなどは観測されていなかったが、ふたご座流星群の母天体と確定したこと、スペクトル分類がB型(C型に近く、炭素質に富む)であることなどから、ファエトンは塵を出し尽くした彗星の成れの果て(彗星・小惑星遷移天体)であると考えられていたが、ファエトンの表面に水分子や含水鉱物が存在しないことや、ファエトンが非常に強い直線偏光度を示すことから、枯れた彗星ではなく、もともと小惑星であって、表面が高温に熱せられるために小惑星帯では揮発しないような物質が揮発して流星物質を放出するのではないかと考えられている[3]

2007年12月8日アレシボ天文台がファエトンのレーダー測定を行った[4]。近日点通過直後の2009年6月、STEREO衛星の観測により一時17等級から10等級に急激に増光し[5]2012年5月にも同様に増光が観測された。この急激な増光の原因として2013年に彗星状の尾が発見され、ファエトンが今もなお活動していることが明らかとなった[6]2017年12月16日に地球から0.06893173 天文単位(約1030万km)まで接近し、アレシボ天文台により再びレーダー測定が行われた結果、形状が球形に近いこと、直径が約6㎞であることが判明した[7]

ファエトンに対しては、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが探査機「DESTINY+」による近接観測を計画している[8][9]2019年には探査に向けての予備観測としてファエトンの大きさを推定するために、日本やアメリカで恒星食の観測キャンペーンが組まれ、7月にアメリカ、10月に日本で掩蔽が観測された[10][11][12][13]

ファエトンは2093年12月14日に地球から0.0194天文単位(291万 km)まで接近すると予測されている。また、潜在的に危険な小惑星 (PHA) の中では最大級の大きさである。

脚注

  1. ^ Arecibo Radar Returns with Asteroid Phaethon Images”. NASA (December 22, 2017). 2019年4月26日閲覧。
  2. ^ 『オックスフォード天文学辞典』(初版第1刷)朝倉書店、345頁。ISBN 4-254-15017-2 
  3. ^ Driss, Takir; Theodore, Kareta; Joshua P. Emery; Josef, Hanuš; Vishnu, Reddy; Ellen S. Howell;;rew S. Rivkin; Tomoko, Arai (2020-04). “Near-infrared observations of active asteroid (3200) Phaethon reveal no evidence for hydration”. Nature Communications (Springer Science and Business Media LLC) 11 (1): 2050. doi:10.1038/s41467-020-15637-7. ISSN 2041-1723. https://doi.org/10.1038/s41467-020-15637-7. 
  4. ^ Arecibo Observatory Spies An Asteroid Close To The Sun、2008年1月2日、2013年7月10日閲覧
  5. ^ 吉田誠一 (2009年11月7日). “小惑星ファエトン(3200) Phaethon (2009)”. 2025年2月27日閲覧。
  6. ^ ふたご座流星群を生んだ小惑星、現役の彗星だったアストロアーツ、2013年6月18日、2013年7月10日閲覧
  7. ^ 地球近傍小惑星ファエトンの姿をレーダーで観測、アストロアーツ、2017年12月27日、2019年4月26日閲覧
  8. ^ DESTINY+とはJAXA(2018年10月26日閲覧)。
  9. ^ 荒井朋子, 小林正規, 石橋高, 吉田二美, 木村宏, 平井隆之, 岡本尚也, 洪鵬, 山田学, 和田浩二, 千秋博紀, 秋田谷洋, SramaRalf, Kru?gerHarald, MarshallSean, 佐々木晶, 薮田ひかる, 石黒正晃, 中村智樹, 大塚勝仁, 渡部潤一, 伊藤孝士, 大坪貴文, 阿部新助, 関口朋彦, 浦川聖太郎, 廣井孝弘, 紅山仁, 諸田智克, 橘省吾, 三河内岳, 松浦周二, 伊藤元雄, 山口亮, 野口高明, 中村 メッセンジャー 圭子, 小松睦美, 小松吾郎, 出村裕英, 平田成, 金田英宏, 柳沢俊史, 黒崎裕久, 巽瑛理, 矢野創, 吉川真, 尾崎直哉, 山本高行, 餅原義孝, 徳留真一郎, 豊田裕之, 西山和孝, 今村裕志, 高島建「新連載:太陽の子・塵の母「Phaethon」をフライバイ! その1 ~深宇宙探査技術実証機デスティニー・プラスDESTINY PLUSの計画概要とサイエンス~」『日本惑星科学会誌遊星人』第33巻第1号、日本惑星科学会、2024年3月、34-50頁、doi:10.14909/yuseijin.33.1_34ISSN 0918-273X 
  10. ^ 小惑星ファエトンによる恒星食を観測して、フライバイ計画DESTINY+を支援しよう”. アストロアーツ. 2021年6月17日閲覧。
  11. ^ 小惑星ファエトンによる恒星食、アメリカで歴史的な観測成功”. アストロアーツ. 2021年6月17日閲覧。
  12. ^ あと一歩!雲にさえぎられたファエトン”. アストロアーツ. 2021年6月17日閲覧。
  13. ^ 再挑戦で雪辱、ファエトンによる恒星食の観測に成功”. アストロアーツ. 2021年6月17日閲覧。

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