Φとは? わかりやすく解説

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Φ

(ファイ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/27 13:36 UTC 版)

ギリシア文字
Αα アルファ Νν ニュー
Ββ ベータ Ξξ クサイ
Γγ ガンマ Οο オミクロン
Δδ デルタ Ππ パイ
Εε エプシロン Ρρ ロー
Ζζ ゼータ Σσς シグマ
Ηη イータ Ττ タウ
Θθ シータ Υυ ウプシロン
Ιι イオタ Φφ ファイ
Κκ カッパ Χχ カイ
Λλ ラムダ Ψψ プサイ
Μμ ミュー Ωω オメガ
使われなくなった文字

()
ディガンマ サン
ヘータ ショー
ギリシアの数字
スティグマ
()
サンピ

()
コッパ

Φ, φ(ファイ[1]、フィー[2]、ピー[1]古代ギリシア語: φεῖ ペーギリシア語: φι フィ英語: phi [faɪ] ファイ)は、ギリシア文字の第21番目の文字。ギリシア数字の数価は500。

キリル文字Фはこの文字に由来する。

音声

古代ギリシア語では無声両唇破裂音帯気音 /pʰ/現代ギリシア語では無声唇歯摩擦音 /f/ を表す。摩擦音への変化がいつごろ起きたかは正確にはわからないが、ビザンチン時代には摩擦音になっていたようである[3]

英語の子音 ph/f/)や、ラテン語の子音 ph/pʰ/)は、古代ギリシア語の φ に由来する[4](例: 哲学を意味する philosophy, philosophiaφιλοσοφία に由来する)。

英語圏の学者が古代の φ を読むときも /f/ で読む場合が多い[5][6][7]

日本の西洋古典学では、「ファ行」と「パ行」の二通りが使われており、表記揺れの一因になっている(例: オルフェウスとオルペウス、ペルセフォネとペルセポネ)[8]。ファ行が現代ギリシア語や英語に近いのに対し、パ行は古典期のギリシア語に近い[9]。 ファ行なら π/p/)と区別できるが、パ行では区別できない[9]

起源

古代ギリシア語には3つの帯気音 /pʰ tʰ kʰ/ があった。このうち/tʰ/にはフェニキア文字を転用することができたが(θ)、それ以外は適当なフェニキア文字が存在しなかった。クレタ島およびその周辺のテーラーメーロスでは文字を追加せず、/pʰ/ の音は単に「Π」と書くか、または「ΠΗ」の2文字で表記したが[10]、それ以外の地域では新たに「Φ」の字を追加した。

この文字の起源については議論が分かれる。古代の文字名称はペー(φεῖ)で、この名は明らかに「π」からの類推によってつけられた[11]。紀元前4世紀の末に ει/iː/ と発音されるようになり、その影響で文字名称も φῖ とされることが普通になった。近代西洋諸言語の名はそれにもとづく[11]

記号としての使用

  • 大文字の「Φ」は、
  • 小文字の「φ」()- 製図直径を表す記号。呼び方は「まる」または「ふぁい」。誤って「パイ」と読まれることがある。
  • 0または 斜線つきゼロ)- アマチュア無線コールサインに使われる(ゼロ)を表記する。

符号位置

Unicodeでは小文字の「φ」に U+03C6 (GREEK SMALL LETTER PHI)と U+03D5 (GREEK PHI SYMBOL) の2つの符号位置が割り当てられている。Unicodeバージョン3.0以降は、前者が一筆書きの、後者が丸に斜線を引いたの字形に対応するが、それ以前は割り当てが逆だった。この変更は現代ギリシア語において一筆書きのが通常用いられる字形であることによる。フォントによっては古いバージョンのUnicodeに従い逆の字形になっていることがある[12]

JIS X 0213では小文字のファイは1-6-53にあり、例示字形は丸に斜線の形になっているが、U+03C6の方に対応することになっている。

大文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 小文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 備考
Φ U+03A6 1-6-21 Φ
Φ
Φ
φ U+03C6 1-6-53 φ
φ
φ
記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
ϕ U+03D5 - ϕ
ϕ
GREEK PHI SYMBOL

TeXでは\phiで丸に斜線のを、 \varphiで一筆書きのを表す。

脚注

  1. ^ a b 堀川宏『しっかり学ぶ初級古典ギリシャ語』ベレ出版、2021年。ISBN 978-4-86064-643-1。9頁。
  2. ^ 風間喜代三、平凡社、改訂新版 世界大百科事典『ギリシア文字』 - コトバンク
  3. ^ Allen (1987) pp.18-26
  4. ^ 辻野匠「学名(ラテン語)のカナ表記についての試論」『地質ニュース』第675号、実業公報社、2010年11月、63頁。 
  5. ^ Donald J. Mastronarde. “Pronunciation Guide”. atticgreek.org. 2025年6月18日閲覧。
  6. ^ David K. Jordan. “Jordan: Pronouncing Ancient Greek”. pages.ucsd.edu. 2025年6月18日閲覧。
  7. ^ William A. Johnson. “Pronunciation”. people.duke.edu. 2025年6月18日閲覧。
  8. ^ レナル・ソレル 著、脇本由佳 訳『オルフェウス教』白水社〈文庫クセジュ〉、2003年。ISBN 978-4560058633 163頁(訳者あとがき)。
  9. ^ a b 逸身喜一郎『ギリシャ・ラテン文学 韻文の系譜をたどる15章』研究社、2018年。 ISBN 9784327510015 420頁。
  10. ^ Threatte (1996) p.272
  11. ^ a b Allen (1987) p.170
  12. ^ “Representative Glyphs for Greek Phi” (PDF). UTR #25: Unicode support for mathematics. https://unicode.org/reports/tr25/#_Toc231 

参考文献

  • W. Sidney Allen (1987) [1968]. Vox Graeca (3rd ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521335558 
  • Leslie Threatte (1996). “The Greek Alphabet”. In Peter T. Daniels; William Bright. The World's Writing Systems. Oxford University Press. pp. 271-280. ISBN 0195079930 




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