パロディと批評性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 01:37 UTC 版)
大友は上記のような新しい手法で、戦後に、漫画において描かれてきた物語を解体し語りなおす作家として登場した。そのため写実的な作風を持つ一方で、彼の作品には過去の漫画作品を始めとする他の作品のパロディ、引用も数多くなされている。 1978年から『rockin'on』で連載された「大友克洋の栄養満点!」(のち『ヘンゼルとグレーテル』に収録。なお、原稿の大半は渋谷陽一が大友に確認せず勝手に廃棄した)では『白雪姫』『赤頭巾』といった有名な童話をシニカルなファンタジーとして語り直しており、1979年より『バラエティ』に連載された『饅頭こわい』(単行本未収録)では毎回2ページを使って『鉄人28号』や『ゲゲゲの鬼太郎』などといった様々な漫画作品のパロディを行なっている。また上述したようにデビュー前の大友は少女漫画誌への投稿歴があるが、1979年『コミックアゲイン』誌では少女漫画の画風を模倣したパロディ作品「危ない! 生徒会長」(『SOS大東京探検隊』収録)を掲載している。代表作である『童夢』は破壊的な超能力を持つ少女が登場する作品であるが、その少女の悦子という名は同じく超能力を持つ少女が登場する作品『さるとびエッちゃん』の主人公にちなんでつけられており、そのほかにも破壊的なパワーを持つ少女(アンドロイド)である則巻アラレ(『Dr.スランプ』)の帽子が描かれるなど、これらの作品へのオマージュであることを示している。OVAにもなった短編作品『猫はよく朝方に帰って来る』に登場する私立探偵は青池保子の『エロイカより愛をこめて』に登場するスパイ、エーベルバッハ少佐のパロディだと筆者自身がコメントしている。長編SF作品『AKIRA』では、主要人物の名前を横山光輝のロボット漫画『鉄人28号』にちなんでつけており、作品の構造も同作品の一種のパロディとなっていることが指摘されている。また2004年の映画監督作品『スチームボーイ』のタイトルは、手塚治虫の『鉄腕アトム』の英題である『アストロボーイ』を意識したものであった。
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