ニュー‐シェパードとは? わかりやすく解説

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ニュー‐シェパード【New Shepard】


ニューシェパード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/30 22:11 UTC 版)

ニューシェパード

ニューシェパード2号機

ニューシェパード (New Shepard) は、アメリカ合衆国宇宙企業ブルーオリジン社が開発運用する垂直離着陸型再使用型であり、弾道飛行用の有人宇宙船である。ニューシェパードの名前はアメリカ初の宇宙飛行士であるアラン・シェパード宇宙飛行士に因んでいる。

概要

ニューシェパードのカプセル

ニューシェパードは、射場から垂直に上昇して約2.5分間のエンジン噴射を行い、約5分間無重力状態で飛行する。その後、クルーカプセルは分離されパラシュートで降下、残りの機体は垂直に降下して着陸するコンセプトである[1]。1回の飛行時間は10分から15分とされる。[2]組み立て工場はワシントン州シアトルの近くにあり、打上げはテキサス州カルバーソン郡郡庁所在地であるバン・ホーン英語版の郊外に建設されたローンチサイト・ワン英語版で実施している。ブルーオリジン社はAmazon.comの創業者であるジェフ・ベゾスの出資により設立された。[3] [4]

2015年宇宙との境界線である高度100kmのカーマン・ラインを超える打ち上げに成功、2021年には初の有人打ち上げにも成功しており、2025年2月現在10回の有人宇宙飛行を実施している。

設計

ニューシェパードは単段式の垂直離着陸機として計画されており、その設計思想はDC-Xとほぼ同じである。質量は54トン、エンジンの推力は1000キロニュートンであり、高度100kmへの商業弾道飛行を目指している。

エンジンは液体酸素液体水素を燃料とするBE-3を使用する。BE-3は垂直離着陸に必要なスロットリング機能を持ち、490kNから89kNまで推力を調整できる。燃料サイクルには、J-2Sロケットエンジンでテストされた、燃焼室で発生したガスでターボポンプを駆動するタップオフサイクルが採用されている。BE-3の設計、開発、製造は全てブルー・オリジン社内で行われ、ジョン・C・ステニス宇宙センターで合計30,000秒に上る450回以上の燃焼試験が実施された。[2]

沿革

  • 2006年11月13日、試験機の初飛行に成功し、高度87mに到達した。
  • 2011年8月末、別の新しい試験用の機体の飛行試験中に爆発を起こし失敗した。この飛行では高度14,000mに到達した。
  • 2015年4月29日、ニューシェパードの初打ち上げを実施。機体は高度93.5km、最大速度マッハ3に到達、クルーカプセルの分離ならびに回収に成功した。しかし打ち上げ機については、降下中の油圧系の圧力低下により回収に失敗した。[5]
  • 2015年11月23日、ニューシェパード2号機の初打ち上げ。機体はカーマンラインを超え、宇宙空間とみなされる高度100.5kmに到達、さらに今回はクルーカプセルの回収に加え、打ち上げ機の垂直離着陸も達成した。[6]
  • 2016年1月22日、ニューシェパード2号機の2回目の打ち上げ。この打ち上げでは、前回の打ち上げで回収した機体を整備したものが用いられた。機体は再び高度101.7kmまで到達、その後再度の垂直着陸を果たした。垂直離着陸式のロケットが実際に再使用され、再度宇宙空間に到達したのはこれが史上初となる。[7]
  • 2016年6月19日、ニューシェパード2号機の4回目の打ち上げ。この打ち上げでは、クルーカプセルのメインパラシュート3つのうち1つが開かなかったという想定でのクラッシュテストが行われた。また、打ち上げの様子が初めてライブ配信された。[8]
  • 2016年10月5日、ニューシェパード2号機の5回目の打ち上げ。以後は3号機に移行した。
  • 2017年12月12日、ニューシェパード3号機ならびに新型クルーカプセルの初打ち上げ。
  • 2021年1月14日、ニューシェパード4号機の初打ち上げ[9][10]
  • 2021年7月20日、初の有人ミッションNS-16英語版に成功(4号機)。ジェフ・ベゾスとその弟のマーク英語版、オランダ出身の18歳のオリバー・デーメン英語版、初の女性宇宙飛行士候補「マーキュリー13」に選ばれながらも宇宙に行けなかった82歳のウォリー・ファンクの4人が搭乗した。デーメンは史上最年少、ファンクは史上最高齡の宇宙飛行士となった。
  • 2022年9月12日、無人の科学ミッションNS-23英語版(3号機)でエンジントラブルによる初の打ち上げ失敗。緊急脱出システムによりカプセルは無事帰還した。[11]
  • 2023年12月19日、無人の科学ミッションNS-24英語版による飛行再開。
  • 2024年5月19日、事故後初となる有人ミッションNS-25英語版に成功[12]。前回の史上最高齡の宇宙飛行士ウォリー・ファンクを更新し90歳のエド・ドワイト英語版、教師向けのソフトエンジニア支援を行う非営利団体Science Buddies英語版の創始者ケネス・ヘス英語版ら6人が搭乗していた[13]

脚注

  1. ^ http://www.aviationweek.com/aw/generic/story_channel.jsp?channel=space&id=news/awst/2011/09/12/AW_09_12_2011_p39-366720.xml&headline=Blue%20Origin%20Failure%20Unlikely%20Show-Stopper
  2. ^ a b 鳥嶋, 真也 (2015年4月9日). “ブルー・オリジン社、「BE-3」エンジン試験を完了 今年中にもロケット打ち上げか”. sorae.jp. そらえ株式会社. 2015年4月9日閲覧。
  3. ^ Boyle, Alan (2006年1月13日). “Amazon founder unveils space center plans”. MSNBC. http://www.msnbc.msn.com/id/6822763/ 2006年6月28日閲覧。 
  4. ^ David, Leonard (2006年6月15日). “Public Meeting Details Blue Origin Rocket Plans”. Space.com. http://www.space.com/news/050615_blueorigin.html 2006年6月28日閲覧。 
  5. ^ Blue Origin’s New Shepard Vehicle Makes First Test Flight” (英語). SPACENEWS (2015年4月30日). 2015年11月25日閲覧。
  6. ^ Blue Origin Makes Historic Rocket Landing” (英語). ブルーオリジン (2015年11月24日). 2015年11月25日閲覧。
  7. ^ 米ブルー・オリジン、ロケットの「再使用」に成功 - 宇宙に到達、着陸にも”. マイナビ (2016年1月25日). 2016年1月31日閲覧。
  8. ^ 米ブルー・オリジン、ロケット再使用で4回目の打ち上げ・着陸に成功”. マイナビ (2016年6月20日). 2016年6月20日閲覧。
  9. ^ Etherington, Darrell. “ブルーオリジンが2021年初ミッションで乗員カプセルの打ち上げと着陸に成功” (英語). TechCrunch Japan. 2021年2月3日閲覧。[リンク切れ]
  10. ^ ジェフ・ベゾスの宇宙船が打ち上げ成功、年内に「有人飛行」へ”. Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン) (2021年1月15日). 2021年2月3日閲覧。
  11. ^ ブルーオリジン「ニューシェパード」無人打ち上げでエンジントラブル、緊急脱出システムが作動”. Sorae (2022年9月13日). 2022年9月14日閲覧。
  12. ^ ブルー・オリジン、1年9か月ぶりに有人宇宙飛行ミッション再開 6人のクルーが搭乗”. Sorae (2024年5月30日). 2024年6月1日閲覧。
  13. ^ Yang, Maya (2024年5月19日). “First Black astronaut candidate, now 90, reaches space in Blue Origin flight” (英語). The Guardian. 2025年2月8日閲覧。

関連項目

外部リンク


ニューシェパード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/13 01:46 UTC 版)

弾道飛行」の記事における「ニューシェパード」の解説

詳細は「ニューシェパード」を参照 ブルーオリジンによって開発され有人宇宙船であるニューシェパードは、弾道飛行による宇宙旅行実現目指しており、2016年現在開発進められている。名称は、前述マーキュリー・レッドストーン3号アラン・シェパード宇宙飛行士由来する2015年11月23日に高度100 kmカーマン・ライン)を超え宇宙空間向けた無人弾道飛行成功させた。

※この「ニューシェパード」の解説は、「弾道飛行」の解説の一部です。
「ニューシェパード」を含む「弾道飛行」の記事については、「弾道飛行」の概要を参照ください。

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