ドット落ちとなる不良原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 05:57 UTC 版)
「ドット落ち」の記事における「ドット落ちとなる不良原因」の解説
ドット落ちの原因にはさまざまなものがある。アレイ基板の電気的な不良が原因である場合には、常時点灯するドットや、逆に、常時消灯するドットが生じる。また、カラーフィルター基板の不良が原因の場合には、色抜けのドットや常時消灯するドットが生じる。 TFT液晶パネルのアレイ基板では、各画素にはTFTが配置されており全画素のTFTが設計どおり動作して初めてまったくドット落ちの無い表示が得られる。このTFT一つひとつは、数μm四方程度の微細なものである。このTFTを含むアレイ基板を製造するには、金属等の薄膜の成膜工程や膜をパターン化する工程(フォトリソグラフィー工程、エッチング工程)が利用され、アレイ基板を完成させるまでに、パターン化工程だけで数回、その前後の成膜工程等まで含めると数十工程が必要となる。同様に、カラーフィルター基板も、赤(R)緑(G)青(B)の各色の透過フィルタや遮光のためのブラックマトリクスが形成され、その完成には数 - 十程度の工程数が必要となる。 これらの工程では、基板(ガラス基板)に残存している表面欠陥(傷)や、各工程におけるエアフロー中のちり、装置からの微細な発塵、成膜中の異物、薬液中の異物等の雑多な原因により、各種のパターンの不良や膜の不良を生じ、これらの不良が画素に影響を与えた場合にドット落ちが生じる。場合によっては、数オングストローム(一億分の1cm・分子レベル)というサイズの異物でもドット落ちにつながる。 そして何より影響が大きいのが、液晶パネルの大きさそのものから生じる難しさである。大型液晶では、小型液晶よりも歩留まりが非常に悪くなる。説明のための一例として、30cm四方の基板で液晶パネルを2つ製造する大型液晶と、20個製造する小型液晶とを比較する。この場合に、不良につながる一つの粉塵がそれぞれの基板に付着することを考える。すると、大型液晶は1パネルだけ良品になるのに対し、小型液晶は19パネルが良品になる。したがって、歩留まりは、大型液晶が50%、小型液晶が95%となる。このように、ドット落ちの技術的な背景に液晶パネルなどの製品の物理的な大きさそのものが大きく影響している。このため、特にサイズの大きな液晶パネルにおいてドット落ちや異物混入を完全に除去するのは現在の最高水準にあるクリーンルームをもってすら不可能とされ、現実的な対処として、事後的な不良ドットの除去や、許容基準を定めた出荷時の製品の選別が行われている。
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