チェットベイカーとは? わかりやすく解説

チェット・ベイカー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/21 01:12 UTC 版)

チェット・ベイカー
Chet Baker
チェット・ベイカー(1983年)
基本情報
出生名 Chesney Henry Baker Jr.
チェスニー・ヘンリー・ベイカー・ジュニア
生誕 1929年12月23日
出身地 アメリカ合衆国
オクラホマ州イェール
死没 (1988-05-13) 1988年5月13日(58歳没)
オランダ アムステルダム
ジャンル クール・ジャズビバップウエストコースト・ジャズ
職業 トランペッター歌手作曲家
担当楽器 トランペットフリューゲルホルンボーカル
活動期間 1949年 - 1988年
レーベル パシフィック・ジャズリバーサイド、ライムライト、プレスティッジCTIスティープルチェイス、エンヤ
共同作業者 ジェリー・マリガン
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チェット・ベイカーChet Baker、本名:Chesney Henry Baker Jr.1929年12月23日 - 1988年5月13日)は、アメリカ合衆国のジャズ演奏家。歌手。米ウエストコースト・ジャズ・シーンの代表的トランペット奏者であり、ボーカリストでもあった。

来歴・人物

チェット・ベイカー(1955年)
アムステルダムにあるチェット・ベイカーのモニュメント

オクラホマ州イェール生まれ。

1946年末、17歳でアメリカ軍に入隊。1947年初頭にドイツへ出発、赴任地はベルリンであった。夏にAFRS(Armed Forces Radio Service: 軍隊放送)でスタン・ケントンディジー・ガレスピーをはじめとするビバップを聴き、魅了されると同時に動揺する。

1948年、急性盲腸炎で手術を受け初めての軍隊生活を終える。カリフォルニア州ハモサビーチに家を構えていた両親のもとへ戻った。レドンド・ユニオン・ハイスクールに入学。1948年、エル・カミノ短期大学に入学。授業料無料の2年制の短大で、学生は退役兵士ばかりだった。

1949年、マイルス・デイヴィス『クールの誕生』を聴き、マイルスの音楽スタイルに共感をおぼえた。同年、両親の支配から逃れたいという思いが強くなっていたチェットは実家を出て、友人のボブ・ホワイトロックとともにレドンドビーチの豪邸のゲストハウスを借りて住むようになった。チェットは麻薬そのものや麻薬をやっている人間に強烈な魅力を感じるようになっており、間もなく友人のボブ・ニールとともに自らマリファナを売る側に回った。

1950年末、マリファナの不法所持で逮捕されたチェットは、判事に軍隊に再入隊するか牢獄に入るかのどちらかを選択するように迫られ、結局軍隊に舞い戻ることを選んだ。軍隊に戻ったチェットはサンフランシスコ・プレシディオに配属された。

トランペットの実力はチャーリー・パーカーにも認められ、1952年から1953年にかけて彼のバンドでも活躍した。その時の演奏は「The Bird You Never Heard (Stash)」で聴くことが出来る。また、その中性的なボーカルも人気があり、1954年にレコーディングされた『チェット・ベイカー・シングス』に収録の「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」はチェットの代表曲の1つであり、同楽曲の代表的カヴァーの1つでもある。このチェットの歌い方にジョアン・ジルベルトが影響され、ボサノヴァ誕生の一因となったと言われている。

1950年代半ばにおいては時代の寵児とも目され、マイルス・デイヴィスとともに人気を誇った。マイルスは、チェットが白人だというだけで大衆的人気を獲得している状況を快く思っていなかったが、チェットの演奏や人間性はマイルスも高く評価しており、仲も良かったという。1950年代後半から1960年代にかけてチェットはヘロインに耽溺し、ドラッグ絡みのトラブルを頻繁に起こした。米国や公演先のイタリアなど複数の国で逮捕され、短期間であるが服役もしている。1970年にはドラッグが原因の喧嘩で前歯を折られ、演奏活動の休業を余儀なくされた。この間には生活保護を受け、ガソリンスタンドで働いていたという。 1973年にはディジー・ガレスピーの尽力により復活を果たし、1975年頃より活動拠点を主にヨーロッパに移した。

1986年3月に初来日、翌1987年にも再来日した。また、1987年から1988年にかけて、ファッション・フォトグラファーのブルース・ウェーバーが監督したチェットの自伝的ドキュメント映画『レッツ・ゲット・ロスト』が撮影された。

1988年5月13日オランダアムステルダムのホテルの窓から転落死、原因は定かではない。

ドキュメンタリー映画『レッツ・ゲット・ロスト』は彼の死後まもなく封切られ、アカデミー賞ドキュメンタリー部門にノミネートされた。

ディスコグラフィ

リーダー作品(一部)

  • Witch Doctor (1953年)
  • チェット・ベイカー・シングス - Chet Baker Sings (1954年, 1956年)
  • Selection From Chet Baker In Paris (1955年 & 1956年)
  • Chet Baker & Strings (1955年)
  • チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ - Chet Baker Sings and Plays (1955年)
  • Picture Of Heath (1956年)
  • Quartet/Russ Freeman-Chet Baker (1956年)
  • Chet Baker & Crew (1956年)
  • Embraceable You (1957年)
  • チェット・ベイカー・イントロデューシス・ジョニー・ペイス - Chet Baker Introduces Johnny Pace(1958年)
  • Chet Baker Sings It Could Happen to You (1958年)
  • イン・ニューヨーク - Chet Baker in New York (1958年)
  • チェット - Chet (1959年)
  • チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ - Chet Baker Plays the Best of Lerner and Loewe(1959年)
  • チェット・ベイカー・イン・ミラノ - Chet Baker in Milan(1959年)
  • Chet Baker with Fifty Italian Strings(1959年)
  • チェット・イズ・バック - Chet Is Back!(1962年)
  • ザ・モスト・インポータント・ジャズ・アルバム・オブ1964-65 - The Most Important Jazz Album of 1964/65(1964年)
  • ベイビー・ブリーズ - Baby Breeze(1964年)
  • ベイカーズ・ホリデイ - Baker's Holiday(1965年)
  • Smokin' with the Chet Baker Quintet(1965年)
  • Groovin' with the Chet Baker Quintet(1965年)
  • Comin' On with the Chet Baker Quintet(1965年)
  • Cool Burnin' with the Chet Baker Quintet(1965年)
  • Boppin' with the Chet Baker Quintet(1965年)
  • Albert's House(1969年)
  • Blood, Chet and Tears(1970年)
  • 枯葉 - She Was Too Good to Me (1974年)
  • You Can't Go Home Again / The Best Thing For You (1977年)
  • Broken Wing (1978年)
  • Someday My Prince Will Come (1979年)
  • Meets the Boto Brasilian Quartet (1980年)
  • Star Eyes (1983年)
  • Diane (1985年)
  • Candy (1985年)
  • Live from the Moonlight (1985年)
  • Cool Cat (1986年)
  • レッツ・ゲット・ロスト - Chet Baker Sings and Plays from the Film "Let's Get Lost" (1987年)
  • Memories / Chet Baker in Tokyo (1987年)
  • The Last Great Concert (1988年)

サイドマン作品(一部)

  • Inglewood Jam-Bird & Chet Live (1952年)
  • ジム・ホールの作品に参加, アランフェス協奏曲 - Concierto (CTI, 1975年)

チェット・ベイカーを扱った映画

脚注

参考文献

  • ジャズ批評編集部編 編『JAZZトランペット』松坂〈ジャズ批評ブックス〉、2001年、30-31頁。ISBN 491555709X 
  • ジェイムズ・キャビン『終わりなき闇 チェット・ベイカーのすべて』鈴木玲子訳 河出書房新社、2006年
  • Baker, Chet; Carol Baker. As Though I Had Wings: The Lost Memoir. St Martins Press, 1997.
  • De Valk, Jeroen. Chet Baker: His Life and Music. Berkeley Hills Books, 2000. ISBN 18-931-6313-X. Updated and expanded edition: Chet Baker: His Life and Music. Uitgeverij Aspekt, 2017. ISBN 9789461539786.
  • Gavin, James. Deep in a Dream: The Long Night of Chet Baker. New York: Alfred A. Knopf, 2002.
  • Ruddick, Matthew. Funny Valentine: The Story of Chet Baker. Melrose Books, 2012.




固有名詞の分類

ポピュラー音楽の音楽家一覧 (個人) エイコン  キャロル・キング  チェット・ベイカー  アンダース・オズボーン  リッキー・リー・ジョーンズ
アメリカ合衆国の歌手 ゲイリー・ビーチ  キャロル・キング  チェット・ベイカー  アンダース・オズボーン  アレックス・ランバート
ジャズ・ミュージシャン ドン・チェリー  リー・ピアソン  チェット・ベイカー  ヒュー・マセケラ  マックス・ローチ
アメリカ合衆国のジャズ・ミュージシャン ボビー・ハッチャーソン  チャーリー・クリスチャン  チェット・ベイカー  シャメク・ファラー  マックス・ローチ
ジャズ・ボーカリスト ジュリー・ロンドン  アストラッド・ジルベルト  チェット・ベイカー  小林桂  ビリー・ホリデイ
アメリカ合衆国のトランペット奏者 ローランド・カーク  ドン・チェリー  チェット・ベイカー  エリック・ミヤシロ  アート・ファーマー

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