ダニエルの公理系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/25 14:13 UTC 版)
ある集合 X 上で定義される有界な実函数の族 H で以下の二つの公理を満たすものをとる(そして H に属する函数を基本函数 (elementary function) と呼ぶ)。 H は通常の(点ごとの)加法とスカラー倍に関して線型空間を成す。 函数 h が H に属するならばその各点の絶対値をとって得られる函数 |h| も H に属す。 さらに、H の各函数 h に対して h の基本積分 (elementary integral) と呼ばれる実数 Ih を対応させる。ここで基本積分は次の三つの公理を満足するものをいう。 線型性: h, k がともに H の元で、α, β が実数ならば I ( α h + β k ) = α I h + β I k {\displaystyle I(\alpha h+\beta k)=\alpha Ih+\beta Ik} が成立する。 非負性: H の元 h が h(x) > 0 を常に満たすならば、Ih ≥ 0 が成立する。 連続性: H の元の列 (hn) が非増大で、X の各点 x において 0 に収斂するならば、Ihn → 0 が成立する。 すなわち、基本函数全体のなす空間 H 上に非負値連続線型汎函数 I を定めるのである。 基本函数および基本積分には、任意の函数空間とその上の非負値連続線型汎函数をとることができる。例えば、階段函数全体の成す函数族は上記基本函数の公理系を明らかに満足する。さらに階段函数全体の成す族の基本積分を、階段函数の下にある領域の(符号付)面積として定義すれば、これが基本積分の公理系を満たすことも明らかである。後述するように、ダニエル積分の構成法を階段函数を基本函数にとって適用することで得られる積分の定義は、ルベーグ積分と同値になる。また、連続函数全体の成す族を基本函数として古典的なリーマン積分を基本積分とすることもできるが、そうして得られる積分はルベーグ積分と同値になる。同じことを、有界変動函数に対してリーマン=スティルチェス積分を用いて行うと、やはりルベーグ=スティルチェス積分に同値な積分が定まる。 零集合を基本函数の言葉で定義することができる。すなわち、X の部分集合 Z が零集合または測度 0であるとは、任意の ε > 0 に対して H の非負値基本函数列 (hp) をうまく選べば、Ihp < ε かつ Z 上で supp hp(x) ≥ 1 とすることができるときに言う。 また、集合が全測度であるとは、その X に関する補集合が零集合であることをいう。集合が、その全測度部分集合の各点で決まった性質を満たすとき、つまりある性質が適当な零集合を除いて成立するとき、その性質はその集合の殆ど至る所成立すると言う。
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