ソフト・パワーの概念誕生の背景とその概要
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 02:35 UTC 版)
「ソフト・パワー」の記事における「ソフト・パワーの概念誕生の背景とその概要」の解説
ソフト・パワーとは、軍事力や経済力などの他国を強制し得るハード・パワーと対置する概念であり、アメリカの対外政策のあり方・手法として生まれた概念である。アメリカ国内においてソフト・パワーという考え方が唱えられた背景には、ブッシュ政権以降のアメリカの中東政策による、国際的な批判の高まりによるところが大きい。2001年、オサマ・ビン・ラディン率いるアルカーイダによるアメリカ同時多発テロ事件を契機として、アメリカがイラクに対する核兵器保有疑惑やテロリスト支援国の疑いがあることを理由にはじめたイラク戦争、また、その後のイラクの戦後統治などにおいて行った一連の政策が、圧倒的な軍事力を背景にした強硬なものであるという国際社会からの批判や、中東やイスラム圏を中心とした反米感情の広がり、またそれを背景にしたテロリズムの頻発やその被害に悩む中で、その事態の打開のための手法として提唱されるようになった。 ソフト・パワーという概念を提唱したのは、クリントン政権下において国家安全保障会議議長、国防次官補を歴任したアメリカ・ハーバード大学大学院ケネディスクール教授のジョセフ・ナイである。1980年代のアメリカ衰退論に異議を唱えた著書 Bound to Lead (邦題『不滅の大国アメリカ』)で最初に提示され、Soft Power: The Means to Success in Wold Politics(邦題『ソフト・パワー』)において精緻化されたものである。 ジョセフ・ナイはこのソフト・パワーによる対外政策の重要性を説く上でブッシュ政権や政権の中枢を占めた、いわゆるネオコンという勢力に対し、客観的に評価または批判をし、軍事力や経済力など強制力の伴うハード・パワーにのみ依存するのではなく、アメリカの有するソフト・パワーを活かすことの重要性を唱えた。さらに、ジョセフ・ナイはこのソフト・パワーをハード・パワーと相互に駆使することによって、国際社会の支持を獲得し、グローバル化や情報革命の進む国際社会において真の国力を発揮し得ることを説いている。
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