シオン賢者の議定書
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/23 01:21 UTC 版)
近現代において生み出された反ユダヤ的な中傷のなかでも有名なのが『シオン賢者の議定書』である。同書は20世紀の初頭、実際に開催された秘密会議の議事録という触れ込みで出回った偽書で、ユダヤ人が世界支配を目論んだ国際的な秘密結社の運営を担っているという内容である。おそらくロシア人の反ユダヤ主義者によってでっち上げたものと見られ、既存のフランス語の著作物にユダヤ人を誹謗する記述が織り交ぜられている。著作者らはさらに、同書をスイスのバーゼルで行われた第1回シオニスト会議に結び付けるため、テオドール・ヘルツルやアハド・ハアムの名前を持ち出している。 『シオン賢者の議定書』が徹頭徹尾でたらめであることはシオニズムに否定的だった者にも十分理解されていた。また、世界支配のための秘密会議などかつて一度も開かれなかったことや、ユダヤ人が「シオン賢者」(原文では「シオンの長老」)なる者を指導者に立てていないことも調べればすぐにわかることであった。にもかかわらず、反ユダヤ主義者は同書をプロパガンダの強力な武器として利用し、数十ヶ国語に翻訳して世界中にばら撒いたのである。 ユダヤ人は当初、反証の余地が十分にあったことから『シオン賢者の議定書』の存在を重要視せず、自ずから欺瞞を露呈するだろうと考えていた。ところが、同書が世界的に流通されて多くの読者を獲得し、あまつさえナチスのプロパガンダに流用されているのを見るに及んで、公開裁判の場において真実を明らかにする手に打って出た。その裁判は1934年、スイスのベルンで開催され、第1回世界シオニスト会議の参加者や世界シオニスト機構の議長ハイム・ヴァイツマンなど専門家に対する質疑を経た後、同書が単なる剽窃物で稚拙な贋作に過ぎないと判断されて結審したのである。
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