ゲラシモフ・ドクトリンとクリミア危機
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「ハイブリッド戦争」の記事における「ゲラシモフ・ドクトリンとクリミア危機」の解説
2013年にはロシアの参謀総長ゲラシモフが、「予測における科学の価値」という論文を発表した。21世紀には近代的な戦争のモデルが通用しなくなり、戦争は平時とも有事ともつかない状態で進む。戦争の手段としては、軍事的手段だけでなく非軍事的手段の役割が増加しており、政治・経済・情報・人道上の措置によって敵国住民の「抗議ポテンシャル」を活性化することが行われる、とゲラシモフは論文の中で述べている。この論文は「ゲラシモフ・ドクトリン」と呼ばれており、翌年発表されたロシアの新しい軍事ドクトリンはこれを踏まえて改定された(なおこの改定は以前のものが出されてから5年と経たずに行われており、7〜10年単位で改定するのが普通のロシアでは異例のことである)。新ドクトリンには「非核抑止力システム」の概念が盛り込まれた。これの定義は「対外政策、軍事的手段、軍事技術的手段の総体であって、非核手段によってロシアに対する侵略を防止することを目的としたもの」である。小泉悠によれば、ロシアはクリミア危機において、この「非核抑止力システム」を自らが転用したものだという。 ハイブリッド戦争が特に注目され始めたのは、2014年クリミア危機からである。この紛争において、ロシアはほぼ無血でクリミアを占領・併合した。そのためロシアは何か新しい軍事力行使の形態を生み出したのではないかと注目が集まった。英国際戦略研究所(IISS)は2015年5月19日、「アームド・コンフリクト・サーベイ2015(Armed Conflict Survey)」において、ロシアがクリミアを併合した手法を「ハイブリッド戦争」と規定した。
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