雲居小桜
クモイコザクラ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 01:31 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動クモイコザクラ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Primula reinii Franch. et Sav. var. kitadakensis (H.Hara) Ohwi (1953)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
クモイコザクラ(雲居小桜)[2][3] |
クモイコザクラ(雲居小桜、学名:Primula reinii var. kitadakensis)は、サクラソウ科サクラソウ属の多年草。コイワザクラ P. reinii var. reinii を分類上の基本種とする変種[2][3][4][5][6]。別名、キヨサトコザクラ[1]。
特徴
地下にある根茎は細く、数個の葉が束生する。葉には長い葉柄があり、白色の長い軟毛が密生する。葉身は径1.5-4cmの円形になり、基部は心形で、縁は基本種のコイワザクラより深く3分の1ほど裂けて掌状に7-9裂し、裂片に少数の粗い先がとがった鋸歯がある。葉の表面に白い軟毛が生えるが後にほとんど無毛になり、裏面の葉脈上に軟毛が多い。花期には葉は完全に展開していない[2][3][4][5] [6]。
花期は5月。花茎は高さ5-10cmになり、先端に1-3個の花を散形につけ、基部には開出した軟毛が生える。花茎の苞は披針形。萼片は長さ5-7mmになり、半ばまで5裂し、無毛。花冠は紫紅色で、花喉部は淡橙黄色、高杯状で径約2cm、先端は5裂して広く開き、裂片の先は約3分の1まで2裂する。花冠筒部の長さは萼片より長い。雄蕊は5個、雌蕊は1個で、雄蕊と雌蕊の長さは株により異なる。果実は蒴果で萼片より少し長い[2][3][4][5] [6]。
分布と生育環境
日本固有種[4]。本州の秩父山地、八ヶ岳、南アルプス、富士山に分布し[2][3][4][5][6]、高山帯から亜高山帯の湿った岩壁に生育する[2][3][5]。
名前の由来
和名クモイコザクラは、「雲居小桜」の意で[2][3]、高地に生える小型のサクラソウの意味[2]。
種小名(種形容語)reinii は、ドイツ人地理学者のヨハネス・ユストゥス・ラインへの献名、変種名 kitadakensis は「北岳の」の意味[7]。タイプ標本の採集地は、南アルプスの鋸岳[1][3]。
種の保全状況評価等
絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)
(2020年、環境省)
ギャラリー
基本種および変種
コイワザクラ
コイワザクラ Primula reinii Franch. et Sav. (1878) var. reinii[8] - クモイコザクラの分類上の基本種。多年草。花茎は高さ5-10cmになり、葉の両面に軟毛が生え、葉身は円形から腎円形で、径1.5-4cm、果時には径5-7cmと大きくなる。クモイコザクラより葉の切れ込みが浅く7-9裂し、裂片の先端はとがった小裂片に3-5浅裂する。花は紅紫色から淡紅色、花冠は径1.8-2.5cm、花冠筒部は長さ8-10mmになる。日本固有種で、本州の富士山周辺、箱根、丹沢山、御蔵島、紀伊半島に分布し、山地の岩場に生育する[2][3][4][5][6]。
絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)
(2020年、環境省)
ミョウギコザクラ
ミョウギコザクラ Primula reinii Franch. et Sav. var. myogiensis H.Hara (1955)[9] - コイワザクラの変種。別名、ミョウギイワザクラ。多年草。基本種と比べ葉の切れ込みが少ない。葉はごく浅く裂け、歯牙はあまり目立たない。花時の葉の径は3cm、果時には径5cmになる。春先、葉が完全に展開する前に開花する。花は淡紅色で径約2cmになる。日本固有種で、群馬県妙義山周辺に分布し、岩場に生育する[4][5][6]。環境省および群馬県のレッドリストでは、「ミョウギイワザクラ」の名称で選定されている[5]。
絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト)
(2020年、環境省)
チチブイワザクラ
チチブイワザクラ Primula reinii Franch. et Sav. var. rhodotricha (Nakai et F.Maek.) T.Yamaz. (1993)[10] - コイワザクラの変種。多年草。花茎は高さ7-12cmになり、コイワザクラよりやや大型。葉柄や花茎の下部に暗赤色の毛がやや密に生える。葉の両面に軟毛が生え、遅くまで残る。葉身は卵形で、径3cm、果時には径5cmと大きくなる。葉の切れ込みはごく浅く掌状に裂け、裂片は円みをおびて不ぞろいの細かい鋸歯になる。葉の裏面や葉脈は赤みをおびる。花は紅紫色、花冠は径2-2.5cm、花冠筒部は長さ14-18mmになる。日本固有種、埼玉県秩父地方の武甲山特産で、石灰岩地の岩場のみに生育する[2][4][5][6]。変種名 rhodotricha は「淡紅色の毛のある」の意味[7]。同属のイワザクラ P. tosaensis の変種 P. tosaensis Yatabe var. rhodotricha (Nakai et F.Maek.) Ohwi (1954)[11]とされたこともある[6]。
絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト)
(2020年、環境省)
脚注
- ^ a b c クモイコザクラ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f g h i j 『新分類 牧野日本植物図鑑』pp.915-916
- ^ a b c d e f g h i 『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花(増補改訂新版)』p.258
- ^ a b c d e f g h 『日本の固有植物』p.110
- ^ a b c d e f g h i 井上健「コイワザクラ」「クモイコザクラ」「ミョウギイワザクラ」「チチブイワザクラ」『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプタンツ(増補改訂新版)』pp.186-188
- ^ a b c d e f g h 高橋英樹 (2017)「サクラソウ科」『改訂新版 日本の野生植物 4』p.199
- ^ a b 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1498、p.1510
- ^ コイワザクラ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ ミョウギコザクラ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ チチブイワザクラ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ チチブイワザクラ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
参考文献
- 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 清水建美編・解説、門田裕一改訂版監修、木原浩写真『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花(増補改訂新版)』、2014年、山と溪谷社
- 矢原徹一他監修『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプタンツ(増補改訂新版)』、2015年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 4』、2017年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
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