カオス的自転
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/01 23:54 UTC 版)
「ヒペリオン (衛星)」の記事における「カオス的自転」の解説
土星からの平均距離はおよそ150万kmで、公転周期は21.3日だが、自転周期と自転軸は不規則に変化する。 1981年、ボイジャー2号がヒペリオンのいびつな形を初めて観測したとき、予想されたものとは違ってその最も長い軸は土星を向いていなかった。 また、いびつな形にもかかわらず、多くの衛星で見られるように潮汐力によって同じ側を母星に向けて公転しておらず、自転周期が公転周期と異なっていることが判明した。 ヒペリオンは比較的大きなサイズの惑星の中では、非常に不規則な形状をし、軌道の離心率が大きく、またより大きな衛星であるタイタンに近いという点で独特な存在である。奇妙なヒペリオンの自転をボイジャーの画像から分析したウィズダムらは、すぐ内側を周る巨大なタイタンとの 3:4 の平均運動共鳴の影響によって、自転が単純な回転ではなくカオス的運動になっていると予測した。すなわち自転は不規則で、一定の周期や軸を持たず、わずかな差が時間とともに急速に拡大するために長期的な予測が実質的に不可能なものであるとされた。 その後行われた地上からの光学的な観測でもこのカオス的な運動は裏付けられた。ヒペリオンのカオス運動のリアプノフ時間はおよそ30日である。 ヒペリオンは実際の天体においてカオス的ふるまいが具体的に示された初めての例となった。他にカオス的自転をする衛星の例としては、冥王星のニクスとヒドラがあり、また海王星のネレイドにもその可能性がある。なお、二重小惑星ではこのようなカオス的な自転状態は一般的だと考えられている。 自転周期と公転周期が潮汐的に同期している他の土星の衛星では、公転の先行半球と後行半球では表面の様子が異なるものが多い。しかしヒペリオンの表面は比較的一様であり、これはヒペリオンがカオス的な自転をしており潮汐的に同期していないことと関連があると考えられる。
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