オートノミスト・マルクス主義の理論
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「オートノミズム」の記事における「オートノミスト・マルクス主義の理論」の解説
オートノミスト・マルクス主義(オートノミスト・マルクシズム、Autonomist Marxism)は、マルクス主義の他の形態とは異なり、労働者階級が国家、労働組合、政党とは独立して資本主義体制の機構に変革を強いる能力があることを強調する。彼らは他のマルクス主義者と比すれば党派的組織にあまり関与せず、代わりに伝統的な組織構造の外部での自己組織化された行動に重点を置く。つまり「ボトムアップ」の理論であり、労働者階級の資本主義への日々の抵抗として欠勤主義(英語版)(absenteeism)、ゆっくりとした仕事、労働現場の自己組織化、破壊活動(sabotage)などの活動に注目する。 他のマルクス主義と同様に階級闘争を最も重要視するが、他のマルクス主義よりも「労働者階級」を幅広く定義し、ホワイトカラーとブルーカラーの両方を含む賃金労働者だけでなく、伝統的には労働組合の対象とされていない賃金労働者ではない学生、非雇用者、家政婦なども含める。 マリオ・トロンティ(イタリア語版)、アントニオ・ネグリ、セルジオ・ボロゴナ(イタリア語版)、パオロ・ヴィルノ(イタリア語版)などの初期の理論家は、マルクス主義の労働の概念を超えた「無形」(immaterial)の「社会的労働」(social labour)に注目した。この考えは、現代の社会的富は計算できない集約的な労働によって生産されており、その富の僅かな一部のみが賃金の形で労働者に再配分されている、とする。他のイタリアのオートノミスト、特にマリアローザ・ダラ・コスタやシルヴィア・フェデリーチ(イタリア語版)などのフェミニストは、フェミニズムや資本主義社会に対する非賃金の女性労働の重要性を強調する。オートノミズムを研究しているMichael Ryanは次のように説明している。 運動及び理論としてのオートノミーは、資本主義は非合理なシステムであり計画によって合理化することができるという考えに反対する。むしろ、それだけで共産主義社会を構築できるものとして、労働者の革命的過渡期のてことしての活動を特権化する見方を前提としている。経済は完全に政治的なものとしてとらえられる。というのは、経済関係は階級間の直接的な政治的力関係だからである。そして、政治的変化のイニシアティブを有しているのは、政党のような疎外された政治形態ではなくして、社会的労働に従事する者の経済的カテゴリーである。
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