イエスは「地獄」へ降った?
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 00:13 UTC 版)
「セカンドチャンス (キリスト教)」の記事における「イエスは「地獄」へ降った?」の解説
反対派の多くは、「よみ」という死後界について、賛成派とは違う観念を持っていることが多い。とりわけ日本の教会の使徒信条で「主は・・・よみにくだり」となっている部分は、米国でよく使われている英語訳では「主は・・・hell(地獄)にくだり」となっている。そのため「よみ=地獄」の観念は、米国などではなかば教理化しており、その観念のもとにセカンドチャンスは否定される。 賛成派は、「主は・・・hell(地獄)にくだり」の部分は、初期の使徒信条には入っていなかったことを指摘している。2世紀の「古ローマ信条」には「地獄」の語は入っていなかったが、4世紀の「使徒信条ラテン語版」になって「彼は地獄(ラテン語インフェロス)にくだり」が付け加えられた。聖書には「彼はハデス(よみ)に捨てて置かれず」(使徒の働き2:31)と書かれ、イエスが行ったのは「よみ」と書かれているが、ローマ人キリスト教徒はこの「よみ」を地獄と同じものと考え、「地獄」に置き換えたのである。「使徒信条」はキリストの使徒が書いたものというわけではなく、後世にまとめられたものなのである。 今日のカトリック教会の英語版使徒信条や、米国プロテスタント教会で多く唱えられている使徒信条が「主は地獄にくだり」となっているのは、こうしたことに由来する。一方、英国国教会や一部の米国教会などでは、この箇所は「主は死者の所へくだり」と述べられ、「地獄」の語は避けられている。日本では、カトリックでもプロテスタントでも使徒信条は「主はよみにくだり」となっている。これは訳者が聖書に基づいて「よみ」としたからである。 しかし米国のプロテスタント教会や、カトリック教会の多くは「主は地獄にくだり」と告白するため、その観念の中に生きている。それを問題視する者も、一方ではいる。米国テレビ伝道の先駆者レックス・ハンバード牧師は、「イエスが行ったよみは地獄とは別の場所だ」と説いた。 メシアニック・ジュー(イエスを救い主と信じるユダヤ教徒)も、「主は地獄にくだり」とある使徒信条を非聖書的として、用いない。イエスは「シェオル」(よみ)にくだられたと告白する。 また「主は地獄にくだり」と告白するのをやめ、「主は死者の所に下り」と言い換える教会も増えてきている。米国神学者ウェイン・グルーデムは、「主は地獄には下らなかった:使徒信条ではなく聖書に従おう」と題する論文を著している。
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