イエスの生地と家系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/07 00:45 UTC 版)
「ナザレのイエス」の記事における「イエスの生地と家系」の解説
「キリストの降誕」も参照 伝統的には、イエスはユダヤの町ベツレヘムにおいて処女マリアから生まれたと信じられている。これは、『マタイによる福音書』1-2章および『ルカによる福音書』2章に拠っている。しかし、荒井献は、最も先行する福音書と考えられる『マルコによる福音書』も、さらにそれに先だつ時期に大部分が執筆されたと考えられる『パウロ書簡』も、あるいは福音書中もっとも年代の新しい『ヨハネによる福音書』もベツレヘムにおける処女降誕に関する記載がない、と主張する。のみならず、荒井献は『ヨハネ福音書』においては、イエスはガリラヤの出身であると記されており、『マルコ福音書』『マタイ福音書』『ルカ福音書』のいずれにおいても、イエスがダヴィデ王の子孫であることは否定されている、と主張するが、実際には『マタイ福音書』1章6-17節、『マルコ福音書』10章 47-48節において、イエスがダヴィデ王の子孫である、とする記載があり、『ルカ福音書』1章 27節にもイエスの父、ヨセフがダヴィデ家の者である、とする記載がある。また母マリアもダビデの子孫である。 『ルカ福音書』によれば、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥス(紀元前27年-紀元後14年)が、全世界の戸籍・人口調査を命令したが、それはシリア総督がプブリウス・スルピシウス・キリニウスだったときのことで、人びとは登録のため自分の故郷へ戻ったとされる。マリアの夫ヨセフはダヴィデ王の流れを汲む家系だったので、マリアをともないガリラヤの町ナザレからダヴィデの町、ユダヤのベツレヘムへおもむいた。そのとき、マリアからイエスが生まれたとしている。にもかかわらず、荒井献によれば、『マルコ福音書』『マタイ福音書』のみならず『ルカ福音書』においても、イエスが「人の子」または「主」として超地上的な存在として信じられており、イエスが「キリスト」であるとしても、単なる地上の王であるダヴィデのような世俗的な王者ではないという主張が認められる、という。 すなわち、『マタイ福音書』や『ルカ福音書』においては、イエスの出生について、イエスが「ダヴィデの子」としてベツレヘムに生まれたという伝承と、その一方で超地上的存在として処女から降誕したという伝承が重なっているのであり、これはたがいに矛盾する[要出典]。荒井は、もしもイエスが処女から生まれたとするなら、マリアだけではなく、イエスとも血統的には無関係なはずのヨセフの系図をダヴィデにまで遡行させる必要はない、と指摘している。八木は、イエスがダヴィデに連なり、ベツレヘムで生まれたという伝承は、メシア(キリスト)はダヴィデの家系から出て、ベツレヘムに生まれるという預言から逆につくられた伝承である可能性を指摘している。荒井は、イエスは誕生物語以外の場面では一貫して「ナザレ人」「ナザレ出身者」の術語が用いられており、これはすべての福音書において一致するとする。このようにみた場合、イエスの出身地はガリラヤのナザレとみるのが妥当である[要出典]。 新井智は、イエスの数人の弟妹のうち実弟といわれるヤコブ(義人ヤコブ)は、キリスト教会の中心的指導者として実際に活動していると主張する。
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