アメリカ検察の反対尋問
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 10:09 UTC 版)
「アルベルト・シュペーア」の記事における「アメリカ検察の反対尋問」の解説
6月21日に検察側反対尋問が行われた。アメリカ検事ジャクソンのシュペーアへの追及は弱く、シュペーアを擁護しようとしているのが露骨に見てとれた。 ジャクソンはまず「貴方はSS隊員だったか?」と質問した。シュペーアは「いいえ、私はSS隊員ではありませんでした」と答えた。シュペーアがSS隊員になっていた事を証明する書類はいくらもあったが、ジャクソンは「貴方は入隊願書に記入したことがある、または誰かが代わりに記入したが、結局貴方は提出しなかったのではないかと私は思っているのだが」という尻すぼみでこの話題を終えた。 さらにジャクソンは「ヒトラーの周辺で彼に面と向かい、戦争に負けると言えた者は貴方以外にはいなかったというのは事実ですか?」、「貴方はドイツ国民が生活を立て直す機会を残したかった。そうですね?」「いっぽうヒトラーは自分が生き残れないならドイツが生き残ろうが生き残るまいが知ったことではないという立場をとった。そうですね?」、「貴方は自国の破滅に責任ある人々を除去するために色々な陰謀に加わったのですね?」などと擁護する質問を連発した。 ジャクソンはクルップ社での強制労働の惨状の証言を証拠書類としてあげたが、これも提出の前にジャクソン自ら「ただしこれから述べる状況の責任が貴方個人にあるというのではありません」と断っておく始末だった。また、ジャクソンは「暗殺計画の後、危険を冒してヒトラーに会いに行ったのは何故か」という質問もしたが、シュペーアが「臆病者のように逃げるのではなく、もう一度ヒトラーに立ち向かうのが私の義務だと思いました。」と回答すると、それをそのまま受け入れ、それ以上詳しく追及しなかった。 最後にジャクソンは「閣僚として、また、現代における指導者の一人として全体の政策には責任を負うが、施行された政策の詳細までは責任を負いかねる。こういえば貴方の立場を公正に述べたことになりますか?」と質問し、シュペーアは「はい。その通りです」と回答した。するとジャクソンは「これで私の反対尋問は終わったと考えます」と述べて反対尋問を終了させた。 ジャクソンはシュペーアにユダヤ人虐殺を知っていたかどうかもマウトハウゼン強制収容所の視察についても一切質問しなかった。ジャクソンはこれ以前からシュペーアを「被告席最上の男」と呼ぶなど彼に共感を寄せていたので、二人の間には密約があるのではと疑われた。そしてそれは事実だった。ジャクソンもシュペーア当人も後年に密約を結んでいたことを認めている。
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