がん化関連タンパク質として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 17:04 UTC 版)
「フィブロネクチン」の記事における「がん化関連タンパク質として」の解説
1970年代前半、細胞のがん化は、細胞表面の糖やタンパク質の変化と関係しているのではないかと想定され、多くの研究者が研究を開始した。1973年、欧米のいくつかの研究室が、独立に、後にフィブロネクチンと呼ばれるタンパク質を発見した。 1973年、英国 王立がん研究基金 のリチャード・ハインズ(Richard O. Hynes)は、1972年に開発された細胞表面タンパク質標識法をハムスターの継代培養細胞に応用し、正常細胞とがん細胞の細胞表面のタンパク質を比較した。すると、正常細胞は細胞のがん化に伴い分子量230kDの巨大なタンパク質が欠損することを発見した。これを、「巨大で,細胞外にある,がん化感受性のタンパク質(large external transformation sensitive protein)」と命名し、頭文字をとって「LETS protein(レッツ・タンパク質)」と呼んだ。 1973年、ワシントン大学の箱守仙一郎は、細胞表面の糖タンパク質標識法を自分で開発し、細胞のがん化に伴う細胞表面の糖タンパク質の変化を調べた。その結果、がん化に伴い細胞表面から消失する糖タンパク質を発見し「ガラクトプロテインa(galactoprotein a)」と命名した。 1973年、フィンランド・ヘルシンキ大学のヴァヘーリ(A. Vaheri)とエルキ・ルースラーティは、ニワトリ線維芽細胞の抗体を用いて、細胞表面にある新しい抗原・タンパク質を発見した。「線維芽細胞(fibroblast)の細胞表面(surface)にある抗原(antigen)」に因んで、このタンパク質を「線維芽細胞表面抗原(fibroblast surface antigen:SFA)」と命名した。翌年、「線維芽細胞表面抗原」は細胞のがん化に伴い細胞表面から消失する糖タンパク質だということを発見した。さらに翌・1975年、「線維芽細胞表面抗原」は寒冷不溶性グロブリンと同じタンパク質であることを証明した。 1974年、米国・オレゴン大学のケネス・ヤマダ(K. M. Yamada)はニワトリ線維芽細胞の細胞表面の主要な糖タンパク質を、生化学的実験に耐える量の数十μgを精製し、「細胞表面タンパク質(cell surface protein:CSP)」と命名した。「細胞表面タンパク質(CSP)」は、「レッツ・タンパク質」、「ガラクトプロテインa」「線維芽細胞表面抗原」と同一分子だった。 同時期、他の研究者も、同等のタンパク質を発見し、「Z-プロテイン」、「L1バンドタンパク質」、「バンドⅠタンパク質」などと命名した。 数年後の1978年、これらは、フィブロネクチンという名称に統合された。
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