いきいきと三月生る雲の奧
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季 語 |
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季 節 |
春 |
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評 言 |
この句のポイントは「雲の奥」で三月が生れるという発想にあります。明るく平明な思いです。素直な自然賛歌です。 ところで、地球の温暖化のせいでしょうか、大地、大気、雲が暴れ大きなハリケーンや台風が生まれ昨年は国内外で様々な異常気象に襲われました。 「雲は空気中の水分が凝結して微細な水滴または氷晶の群となり、高く空に浮いているもの」と辞書には記されています。 しかし昔から雲は人と密接に関係し、空を見上げればそこには様々な形の雲があり、幼児から大人まで、見る人により動物や魚の姿として映り、愛すべきもの、四季を感じるもの、生活の一部でもありました。 真綿、絹、鯖、鱗、羊、鰯、入道などさまざまな比喩が雲に与えられています。 また、雲の動きには「天つ風雲のかよひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ」(僧正遍昭)と百人一首に詠われているように刻々と代わる雲の不思議さ、優雅さも感じることが出来ます。 作者はこの句で自然、動物、生活が動き出す三月の明るい希望の春を詠んでいます。肺を患ったことのある作者にとっては自然のありがたさ春の嬉しさはことのほかだったと推察されます。 豊かな自然の中の高みにある雲に見つけた、毎年必ず訪れる春の営み。そして四季の移ろいをつづった抒情味ある龍太34歳にふさわしい若々しい句です。 |
評 者 |
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備 考 |
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