『グレイズ・イン法学院録』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 01:56 UTC 版)
「シェイクスピア別人説」の記事における「『グレイズ・イン法学院録』」の解説
『法学院録』の最終段落(右図参照)では'greater lessens the smaller'という構文が用いられているが、これは『ヴェニスの商人』(1594年–1597年)の第5幕第1場で使用されているのと同じものである。 Nerissa. When the moon shone we did not see the candle.Portia. So doth the greater glory dim the less,A substitute shines brightly as a KingUntil a King be by, and then his stateEmpties itself, as doth an inland brookeInto the main of waters.ネリッサ 月が輝いていたときにはロウソクが見えませんでした。ポーシャ そう、強い光は弱い光を霞ませてしまうのよ。代理人が国王として輝いていられるのも、正当な国王が戻ってくるまでのこと。そうなれば代理人の立場なんて無意味になってしまうわ。小さな川の流れが大きな海へ溶け込んだときのように。 — 『ヴェニスの商人』第5幕第1場 『法学院録』は、『ヴェニスの商人』のこの一節と同じテーマや例を3つ用いている。貴族のために影の薄くなってしまう臣下、天体の輝きによって霞んだ淡い光、海へ溶け込んで薄められる川などである。ベーコンもまた1603年以降のエッセイにおいて、これらの例の内2つを使用している。「完全な混和の第二の状態は、より強いものがより弱いものを弱めるというものである。したがって二つの光が合わさったときにはより強い光がより弱い光を暗くするということが分かる。そして小さな川は大きな川へ流れ込み、それ自体としての名前も流れも失うのである」。「名前も流れも失う」とよく似た表現が『ハムレット』(1600年 - 1601年)の第3幕第1場にも見られる。 Hamlet. With this regard their currents turn awryAnd lose the name of action.ハムレット 大事業もこうして流れをよどませ、行動を起こす名分を失ってしまう。 — 『ハムレット』第3幕第1場 ベーコンは自分の参照した資料に言及するのを注意深く避け、自身の著作においてシェイクスピアの名に触れることは一度もなかった。『法学院録』が1688年の出版以前に回覧されていたとしても(そのような事実は知られていないが)、手にすることができたのは法学院の関係者に限られていただろうともベーコン派は主張している。
※この「『グレイズ・イン法学院録』」の解説は、「シェイクスピア別人説」の解説の一部です。
「『グレイズ・イン法学院録』」を含む「シェイクスピア別人説」の記事については、「シェイクスピア別人説」の概要を参照ください。
- 『グレイズ・イン法学院録』のページへのリンク